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展覧会紹介 華やぎのジュエリー

19世紀後半のパリは、世界に知られる華やかな近代都市として発展を遂げていました。ブシュロンやカルティエなどの名門宝石店が競い合うなか、ラリックは芸術性の高い斬新なジュエリーで、一躍脚光を浴びます。象徴主義的な女性像や身近な自然をモティーフに、七宝(エナメル)やガラス、半貴石、象牙獣角など様々な素材を用い、ジャポニスムの要素を取り入れたジュエリーは、詩人ロベール・ド・モンテスキュー伯爵や女優サラ・ベルナールら、当時の知識人や上流社交界の人々を魅了しました。

ハット・ピン《ケシ》 ※東京会場のみ出品 1897年 オルセー美術館蔵 (C)RMN(Musee d'Orsay)/Jean Schormans/distributed by DNPartcom

ハット・ピン《ケシ》 ※東京会場のみ出品 1897年 オルセー美術館蔵
(C)RMN(Musee d'Orsay)/Jean Schormans/distributed by DNPartcom

ブローチ《ケシに囲まれた女の胸像》 1900-1901年頃 カルースト・グルベンキアン美術館蔵 (C)Calouste Gulbenkian Foundation Photo: Calouste Gulbenkian Museum Photo Lab.

ブローチ《ケシに囲まれた女の胸像》 1900-1901年頃
カルースト・グルベンキアン美術館蔵 (C)Calouste Gulbenkian Foundation
Photo: Calouste Gulbenkian Museum Photo Lab.
愛の美神アリス
ラリックの世界の中心には、常に魅惑的な女性の姿があります。30歳の頃、工房の協力者である彫刻家オーギュスト・ルドリュの娘アリス・ルドリュと出会ったラリックは、すでに妻子がありながら激しい恋に落ち、苦悩の末にアリスと結ばれます。アリスという美神を得たラリックは、「かつて見たことのない宝飾品」の創作を目指し、文字通り寝食を忘れて制作に没頭しました。
本展では、アリスをモデルにしたと思われるブローチ《ケシに囲まれた女性の胸像》が出品されます。また、卓越した技法を駆使し、1897年のサロンで国家買い上げとなったハット・ピン《ケシ》、それとは対照的に、妻に捧げる私的な作品として作られた銀製のバックル《ケシ》が、ラリックの工房を出て以来初めて同時に展示されます。アリスの肖像写真やふたりの間で交わされた恋文など、貴重な資料も併せて紹介します。

ケシのバックルをつけたアリス1895年 オルセー美術館蔵 (C)RMN (Musee d'Orsay)/distributed by DNPartcom

ケシのバックルをつけたアリス
1895年 オルセー美術館蔵
(C)RMN (Musee d'Orsay)
/distributed by DNPartcom

香水瓶《シダ》 ※ジュエリー時代初期のオリジナル香水瓶の代表作 1912年 個人蔵

香水瓶《シダ》
※ジュエリー時代初期の
オリジナル香水瓶の代表作
1912年 個人蔵

ティアラ《雄鶏の頭》 1897-1898年頃 カルースト・グルベンキアン美術館蔵 (C)Calouste Gulbenkian Foundation Photo: Calouste Gulbenkian Museum Photo Lab.

ティアラ《雄鶏の頭》 1897-1898年頃 カルースト・グルベンキアン美術館蔵
(C)Calouste Gulbenkian Foundation Photo: Calouste Gulbenkian Museum Photo Lab.

コサージュ・オーナメント《騎馬試合》 1903-1904年頃 カルースト・グルベンキアン美術館蔵 (C)Calouste Gulbenkian Foundation Photo: Calouste Gulbenkian Museum Photo Lab.

コサージュ・オーナメント《騎馬試合》 1903-1904年頃
カルースト・グルベンキアン美術館蔵
(C)Calouste Gulbenkian Foundation
Photo: Calouste Gulbenkian Museum Photo Lab.
大コレクター カルースト・グルベンキアン
ラリックの顧客台帳には、大女優のサラ・ベルナール、世紀末の社交界に君臨した象徴派の詩人ロベール・ド・モンテスキュー伯爵、女流詩人ルネ・ヴィヴィアン、アメリカ出身の文筆家ナタリー・クリフォード・バーニー、美術品収集家として名高いアルコナティ・ヴィスコンティ公爵夫人やマルティーヌ・ド・ベアルヌ伯爵夫人、さらに米国の大富豪ヘンリー・ウォルタースらが名を連ねていました。 こうした華やかな交友関係の中でも、イスタンブール出身の実業家で国際的にも知られる美術品コレクターであったカルースト・グルベンキアンほど、ラリックに深い影響を与えた人物はいないでしょう。石油採掘事業で巨万の富を築いたグルベンキアンは1899年頃にロンドンでラリックと出会い、ふたりは深い友情で結ばれました。ラリックは、優れた審美眼の持ち主であったグルベンキアンとの会話に触発され、あるいは彼が所蔵する古今東西の優れた考古史料や美術品に霊感を受けて、グルベンキアンがいなかったらできなかったであろう数々の傑作を生み出しました。本展では、カルースト・グルベンキアン美術館(リスボン)の全面的な協力を得て、代表作ティアラ《雄鶏の頭》をはじめ、コサージュ・オーナント《騎馬試合》、シール・ベルデュの花瓶《ネズミと葉の茂み》など、国内初出品を含む、総数34点を展観します。

グルベンキアン邸サロン(パリ、イエナ大通り) (C)Calouste Gulbenkian Foundation Photo: Calouste Gulbenkian Museum Photo Lab.

グルベンキアン邸サロン(パリ、イエナ大通り)
(C)Calouste Gulbenkian Foundation
Photo: Calouste Gulbenkian Museum Photo Lab.

ペンダント《デーイアネイラの略奪》 1900-1902年頃 カルースト・グルベンキアン美術館蔵 (C)Calouste Gulbenkian Foundation Photo: Calouste Gulbenkian Museum Photo Lab.

ペンダント《デーイアネイラの略奪》
1900-1902年頃 カルースト・グルベンキアン美術館蔵
(C)Calouste Gulbenkian Foundation
Photo: Calouste Gulbenkian Museum Photo Lab.

蓋付杯《孔雀の羽根》 ※1900年パリ万国博覧会出品作 1897-1899年 カルースト・グルベンキアン美術館蔵 (C)Calouste Gulbenkian Foundation Photo: Calouste Gulbenkian Museum Photo Lab.

蓋付杯《孔雀の羽根》
※1900年パリ万国博覧会出品作
1897-1899年 カルースト・グルベンキアン美術館蔵
(C)Calouste Gulbenkian Foundation Photo: Calouste Gulbenkian Museum Photo Lab.