2009年7月9日8時39分
原爆投下後の広島で新たな命が誕生した実話をもとにした「生ましめんかな」で知られる詩人、栗原貞子(1913〜2005)の未発表作品86編が見つかった。遺族から創作に関する資料の寄贈を受けた広島女学院大が8日、発表した。
未発表詩の大半は、栗原の自宅倉庫にあったノート8冊や原稿用紙に自筆で書かれていた。一部に記された日付から60〜93年のものとみられる。家族、知人にささげる叙情性豊かな作品が目立つ。栗原と親交があり、資料の解読にあたった詩人の伊藤真理子さん(70)=東京都墨田区=は「『戦う詩人』のイメージが強いが、本来の栗原さんはロマンチストで、とてもこまやかな方。そうした素顔がかいま見える」と話す。
一方、原爆で死んでいった人々の悲しみや、ベトナム戦争、湾岸戦争への怒りを込めた詩も多く見つかった。「無数のわたしとあなた」と題した詩からは、平和を求める人々の連携で世界を変えたいという願いが読み取れる。
広島女学院大はこのうち41編を収めた冊子「生ましめんかな」1千部を刊行した。無料。希望者は送料として200円分の切手を添えて申し込む。問い合わせは広島女学院大図書館(082・228・0392)へ。(加戸靖史)