2009年7月24日19時1分
「住まいと食事を提供する」を誘い文句に、大阪市内の不動産業者が府内の路上生活者に生活保護を申請させ、割高な家賃と弁当代を要求して保護費の大半を得ていることがわかった。受給者の通帳類を預かり、月約12万円の保護費から2万〜4万円しか渡していない。受給者の意思に反して契約を強制する「貧困ビジネス」との指摘もあり、大阪弁護士会は受給者側から人権救済の申し立てを受けて調査に着手した。
全国の弁護士らでつくる「ホームレス法的支援者交流会」などによると、大阪市生野区の不動産業者は「生活安心ネットワーク」と称し、公園や繁華街で炊き出しなどをして路上生活者らを勧誘。弁当の配達などを依頼する契約書に署名させて自社管理のアパートに入居させている。
さらに銀行口座を開設させ、通帳とキャッシュカードを管理するとともに、生活保護申請で自治体の窓口に同行。保護費全額をカードで引き出し、家賃と弁当代を差し引いた残金を手渡すという。
堺市内のアパートに住む70代男性の家賃は4万円で、市の単身者向け住宅扶助の上限額。このアパートの同じ間取りの部屋は約3万円で賃貸されている。弁当代は1日1食で月に3万8千円かかり、1食あたり約1300円。2食だと月5万3千円する。受給者から「350円くらいで買える」という不満が相次ぐ。
業者側は弁当の配達などを断った場合は「即座に退去する」との誓約書や、通帳類について「自分の意思で保管を依頼する」とした確認書を受給者に書かせていた。
業者の説明では、現在、大阪、堺両市を中心に契約者は150〜200人。堺市によると、37人の受給者がおり、さらに増える見通しだ。市は生活保護法に基づき、受給者宅への立ち入り調査を始めた。