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2006/07/06

渡辺玲子 ナビゲーター&ヴァイオリン

2006年6月23日
演奏はもとよりお話も上手
ナビレーター&ヴァイオリンの渡辺玲子

 渡辺玲子さんは、言語明瞭、意味も明瞭で、満席の聴衆を十分に楽しませてくれた。演奏家は腹で、出す音を腹筋で支えるものでもあるので、話す声もよく通る人が多いが、彼女もとてもいい声でお喋りをした。[最初の一かじり]

 渡辺さんは読書家でもあり、音楽の背景にあるものにも常に関心をはらっているようで、この日のための付け焼き刃という感じはなく、話が自分の言葉として出ていた。
 すべてギリシャ神話からとられた「3つの神話」では、「アルトゥーサの泉」の、アルトゥーサが河の神アルペイオスから逃れるために泉になると、アルペイオスはその泉に流れ込む河になった話、そして音楽には流れる河が表現されていること、水面に映る自分の姿に恋する「ナルシス」、牧神パンに追いかけられたシュリンクスは1本の葦となって葦の叢に身を隠すと、パンは葦を切って笛を作った、それがパンの笛という話(ドリアードはパンと舞いを踊る木の精)。
 クライスラーでは、自伝を引用しながら、練習ぎらいだったこと、聴衆を見てその日の音楽を決めていたこと(僕は、名人の名をほしいままにした落語家、故・志ん生みたいだと思った。だいたい、1960年代頃までは、高座に上がる日本の芸人と、ステージに立つ欧米のアーティストはよく似た心性があったように思えるのだ)、などを話題にし、パガニーニでは、さまざまな技法、駒の近くで弾くスル・ポンティチェッロや、運弓に指のピッチカートを混ぜるテクニック、「モーセ」の主題による幻想曲では、ピアノ・パートは変ホ短調で書かれているのにヴァイオリン譜はハ短調で記譜されていること、それは、この作品は4本の弦のうち一番低いG線だけで演奏するように指定されているが、そのG線の調弦を短三度上げて、つまりハ音の指使いで奏でると出てくる音は短三度上の変ホ音になるように仕掛けてあるからで、これは、高めに調弦すると弦の張力が増して音が艶やかになる、その音質をパガニーニは求めたのだ、と丁寧に説明をし、実際に高い調弦をしてワン・フレーズを聴かせた。(ただ、昔はピッチも低く、弦はガット弦だったのであまり楽器に負担が掛からなかったが、現在の楽器ではピッチも高いうえスチール弦なので楽器に強い張力がかかって壊れる可能性があるので、このままでは演奏しません、とも説明した。)
 エネスコでも、民俗音楽の面に触れ、その中に含まれると考えられる1/4音(ピアノの鍵盤上にある半音 [1/2] の半分の音程)を実際に演奏してみせたりした。
 演奏した時間と話に費やした時間とどちらが多かっただろうか、演奏でもお喋りでも満席のお客様を楽しませた。
 ピアノの坂野さんもなかなか表情豊かにいいデュオを行った。強靱な音質のStainway & Sons のピアノからあたかもベーゼンドルファーのような温かみのある音を弾き出していた。特にクライスラーの音楽では、そういう室内楽的ともいえる音質がよく合うのだ。

2006年6月23日(19時開演)東京文化会館小ホール
Lecture Concert
season 2006-2007〈音楽に秘めた愛〉シリーズ
第1回ヴァイオリンに捧ぐ
dedicated to violin
ナビゲーター&ヴァイオリン 
渡辺玲子 Watanabe Reiko
ピアノ
坂野伊都子 Sakano Itsuko

プログラム
(欧文のアクセント記号等は表記されていません)

クララ・シューマン(1819-96)
Clara Schumann
3つのロマンス op.22
3 Romanzen op.22
カロル・シマノフスキ(1882-1937)
Karol Szymanowski
神話−3つの詩 op.30
Mity-3 Poematy op.30
第1曲 アルトゥーサの泉 Zrodlo Aretuzy
第2曲 ナルシス Narcyz
第3曲 ドリアードとパン driady i Pan
フリッツ・クライスラー(1875-1962)
Fritz Kreisler
ウィーン綺想曲
Caprice viennois
愛の喜び
Liebesfreud
愛の悲しみ
Liebesleid
美しきロスマリン
Schon Rosmarin
中国の太鼓
Tambourin chinois
ニコロ・パガニーニ(1782-1840)
Nicolo Paganini
ロッシーニの「モーセ」の主題による幻想曲
Fantasia su 'Dal tuo stellato soglio' della 'Mose' di Rossini

ジョルジュ・エネスコ(1881-1955)
Georges Enesco (George Enescu)
ヴァイオリン・ソナタ第3番イ短調 op.25「ルーマニアの民俗風で」
Sonate pentru vioara si pian Nr.3 'In caracter popular romanesc' op.25

アンコール
マスネ:タイスの瞑想曲

主催:財団法人東京都歴史文化財団 東京文化会館
企画制作:東京文化会館事業企画課

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