【ウルムチ(中国新疆ウイグル自治区)鈴木玲子】中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市では5日の大規模暴動後、当局が市内のインターネットを遮断し、国際電話をかけられないようにするなど市民への情報統制強化を続けている。日常生活が戻り始める中で、長引く通信・情報手段の制限に市民の不満は募っている。
「客なんて来ないさ」。市中心部にあるネットカフェの入り口で責任者のムジャパールさん(20)は、ため息をついた。24時間営業で通常は連日約300人の客でにぎわうが、この日は午後になっても客はまだ1人。5日夜の暴動後、ネット遮断が始まったため、店は「開店休業状態」だ。店内で手持ちぶさたの従業員数人がパソコンゲームで遊んでいた。
ムジャパールさんは5日夜、街頭の群衆の騒然とした様子にただ事ではないと感じ、慌てて営業を中止。6日は既にネットに接続できなかったという。ネット遮断について当局からの通知などはない。唯一接続できたのは自治区共産党系の報道サイト「天山ネット」だ。
店にいた若い男性常連客は「仕方がないのでパソコンで映画を見ている。早くネットを回復してほしい」とこぼす。また、貿易関連会社の男性(28)は「仕事先とメールでやり取りが多いので困っている。うんざりだ」と不満を募らせる。
市内ではネットや国際電話の使用が制限され、中国で広く使われる携帯電話のショートメールサービスも遮断。当局はウルムチと外部の情報接触を抑え込んでいる。当局にとって都合の悪い情報が市民に流布し、ウイグル族、漢族双方の民族感情が悪化して社会の不安定化が拡大するのを恐れているとみられる。
一方、街の商店やビルの壁などには無数にビラが張られている。中国語とウイグル語で「新疆は古くから祖国不可分の一部だ」「各民族の大団結を強化しよう」などと団結や安定を強調する。通りには街宣車が行き交い、大音響で「民族融和」を呼びかけていた。
毎日新聞 2009年7月16日 19時51分