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中国:民心掌握に野菜安売り ウイグル自治区で政府が秘策

ウイグル族居住区に野菜直売所が設けられ、ウイグル族らが殺到した=中国・ウルムチで鈴木玲子撮影
ウイグル族居住区に野菜直売所が設けられ、ウイグル族らが殺到した=中国・ウルムチで鈴木玲子撮影

 大規模暴動が起こった中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区ウルムチ市で、市民は日常生活を取り戻しつつある。しかしウイグル族、漢族の間に刻まれた溝は深い。政府は市民に「民族団結」を呼びかけると共に、民心掌握を図っている。【ウルムチ(中国新疆ウイグル自治区)で鈴木玲子】

 「野菜は十分あります。順番に」。ウイグル族居住区の交差点に、臨時野菜直売所が設けられていた。約20種類の野菜が格安で買えるため、ウイグル族らが殺到していた。

 販売価格はすべて1キロ1元(約14円)。トマトなら市価の3分の1の安さ。暴動で一時、市場が閉まったため政府は直売所を各地に設けて生活支援策をアピールし、民心をつかむ作戦だ。特にこの直売所は心理作戦にはうってつけの場所だ。

 道の反対側には、中国政府が、暴動を計画的に策謀したとして非難する亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル主席(62)が亡命前に建設した「ラビアビル」があるからだ。直売所わきで街宣車がウイグル語で「国家分裂を許すな。暴動の首謀者ラビアを信じるな」とがなりたてる。

 ビルは政府の接収後、「ウルムチビル」に改名されたが、「ラビア商業貿易ビル」との看板が掲げられている。ウルムチ市民で「ラビアビル」を知らない人はまずいない。92年に建設された8階建てで、当時は市内で最も高いビルだったという。だが、今は閉鎖が続いている。

 ラビア主席は実業家として成功したが、民族問題で政権を批判し、99年に国家機密漏えい罪で逮捕、投獄され、05年に米国に亡命した。ビル近くでウイグル族の小物売りの男性(28)は、周囲の警官を気にしながら明かした。「ラビアは貧しい出稼ぎ者を支援し、ウイグル族は亡命後の今も尊敬している。ラビアが暴動の首謀者だという政府発表を信じるウイグル族はいないだろう」

毎日新聞 2009年7月18日 11時34分(最終更新 7月18日 12時15分)

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