2009年7月17日23時51分
【テヘラン=吉武祐】大統領選後の混乱が尾を引くイランで、政界の有力者であるラフサンジャニ元大統領が17日、テヘラン大学での金曜集団礼拝で導師として演説し、「多くの国民が選挙結果に疑念を抱いている」と述べた。再選は確定したとして異論を認めないアフマディネジャド政権に対し、国民の信頼を取り戻すよう努力を求めた形だが、現状を打破する解決策は提示できなかった。
選挙後、ラフサンジャニ師が導師を務めるのは初めて。激しく対立する保守・改革両派を仲介しうる有力者として発言が注目されていた。
ラフサンジャニ師は演説で、選挙後の混乱が「国民の信頼を損ねた」と指摘。「何らかの策が講じられるべきだ」と、アフマディネジャド政権に挑戦的な姿勢を見せた。また、選挙の不正を訴える抗議デモや集会の参加者と改革派指導者が大量に拘束された事態について、「彼らは釈放されるべきだ」と政権を批判。メディアへの規制も緩和するよう求めた。
ラフサンジャニ師は大統領選では改革派のムサビ元首相を支持し、保守派のアフマディネジャド氏とは政敵、最高指導者ハメネイ師とはライバル関係にあるが、最高評議会の議長など要職を務め、体制の安定を優先する考えから仲介役としての立場も期待されていた。
しかし、「我々は同じ家族の一員だ。今日の金曜礼拝が危機的な状況を乗り切るきっかけになってほしい」と国民融和を訴えるにとどまった。
この日の礼拝にはムサビ元首相も出席。事前の予告があったため数万人の支持者が会場周辺に押し寄せ、「アフマディネジャドは辞めろ」などと気勢を上げた。テヘラン大学の門の前にも数千人が集結したが、ロイター通信によると、警察が排除のために催涙弾を撃ち、少なくとも15人が拘束された。
また、同じ改革派のキャルビ元国会議長が礼拝に向かう途中、志願民兵バシジのグループに殴られたという。元議長の政党「国民の信頼」がウェブサイトで明らかにした。