最終更新: 2009/07/17 17:05

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チェチェン紛争などで揺れるカフカス地方の血塗られた発火点の今を読み解きました。

ロシアのグルジア侵攻からまもなく1年、チェチェン紛争などで揺れるカフカス地方の血塗られた発火点の今を読み解きました。

7月に行われたロシア軍の大規模軍事演習の一場面は、実戦かと錯覚するものだった。
演習は「カフカス2009」と題され、8,000人以上のロシア軍将兵が参加した。
この演習の目的について、軍事評論家の宇垣大成氏は「今回の演習の特徴としては、ロシア南部のカフカス地域の情勢が危機的だというシナリオを用意して、対テロや小規模な紛争への対応を重視した戦力を展開したこと、これが注目点です」と語った。
ロシアの描くこのカフカス情勢悪化のシナリオは、現実のものとなっている。
ロシア南部カフカス地方のチェチェン共和国では、15日、女性人権活動家が何者かに拉致され、森で遺体となって発見された。
その隣国のイングーシ共和国では、6月22日、大統領が爆薬を積んだ車の自爆攻撃を受け、重傷を負う事件が発生している。
止まらない流血、このカフカスで何が起きているのか。
青山学院大学の寺谷弘壬名誉教授は「1994年から戦っているチェチェンの独立派、過激派というのは、いまだに対立ののろしを上げているんですね。チェチェン政府とロシア政府がまさに敵で、し烈な戦いが極度に今、達しているところですね」と話した。
1992年当時、ロシア連邦の中にあったチェチェンでは、イスラム系住民が中心となって、ロシアからの分離独立を宣言した。
しかし、これを認めないロシアは、軍事介入を開始した。
この結果、チェチェン紛争は、2度もの大規模紛争に拡大した。
1998年、当時のプーチン第1副首相は「チェチェンはロシアの領土です。ならず者が現れたら、一掃すべきだ」と述べていた。
ロシア軍の激しい攻撃の前に、独立派はチェチェン内部での基盤を次第に失い、山間部に追い詰められるなど、ロシアの思わくは達せられるかに見えた。
しかし、独立派は、武装勢力として2002年、モスクワでの劇場占拠事件や2004年9月の北オセチア・ベスランでの学校占拠事件など、多数の犠牲者をともなう大規模なテロ事件を起こし、ロシアを揺さぶる戦術に出るようになる。
これに対し、ロシアはチェチェン武装勢力をテロリストとし、以後の事件では、武装勢力に対して、全く妥協のない強硬策をとるようになった。
そして、13日、ロシアのメドベージェフ大統領は、カフカスの1地域、南オセチアを突然訪問した。
南オセチアは2008年、ロシアと反ロシアの姿勢を強めたグルジアとの間で、武力紛争が発生した地域で、現在はロシアの影響力が強い。
大統領は今回、この南オセチアにあらためて支援の意思を表明した。
メドベージェフ大統領は「軍事分野での支援や協力が、わたしたちの間には必要だ」と述べ、力をもってしてでも、南オセチアを含むカフカスを影響下に治めたいとする姿勢を示した。
実は、軍事演習「カフカス2009」には、こうした南オセチアに駐留するロシア軍部隊も動員されていたという。
そして、その装備は、内戦の制圧にしては重装備なものになっていると専門家は指摘する。
軍事評論家の宇垣大成氏は「今回の演習映像でも、ゲリラやテロリストの拠点に対して、対地攻撃機や攻撃ヘリコプターを使って、空と陸から立体的に攻撃する様子が見られます。これは、実はロシアがかつてアフガニスタンで、ゲリラを1人も逃すまいとして採用した重装備を持つ部隊によるせん滅戦術と同じものです」と語った。
カフカス情勢は、ロシアの積極関与とともに不気味な動きを見せる。
そこには、理由があるとされる。
ロシアは、オリンピックという失敗できない晴れの舞台を2014年に控えている。
しかし、その会場となるソチは、問題のカフカス地方、黒海沿岸に位置し、発火点ともいえるチェチェンなどに極めて近い位置にある。
青山学院大学の寺谷弘壬名誉教授は「(反ロシアは)高まっていくでしょう、オリンピックはいいチャンスですし。火が非常に広範囲に燃え始めているんですね。これは抑えきれないと思いますね。クレムリンとしては、困るような状態が今後、起こる可能性がある」と話した。
カフカスで噴出する反ロシアの動きに、クレムリンは果たして決着をつけられるのか、注目される。

(07/17 00:36)


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