保健所だより第19号 食品の「生食」にご注意!
お刺身、生卵、生野菜など加熱せず生で食べられる食品はいろいろあります。これらは生鮮で、細菌の増殖などがなく衛生的に取り扱われているものです。
一方、皆さんが毎日召し上がる食品の多くは、「焼く」「煮る」「揚げる」「蒸す」などの加熱調理をしないと、食べることができません。それは、加熱調理によって美味しくすることもありますが、食材に付いている細菌やノロウイルスを加熱することで、食中毒を起こさないようにする昔からの知恵です。
ところで最近、鶏肉の生食による「カンピロバクター食中毒」が増えています。また、これから冬季にかけては、生カキによる「ノロウイルス食中毒」がピークを迎えます。
そこで今回は、食品の『生食』についての注意点をまとめてみました。
食肉の生食〜とても危険ですよ!
最近、飲食店で提供された生もしくは生に近い(表面だけ湯通ししたもの)鶏肉、鶏の内臓(生レバー・砂肝)を生食し、カンピロバクターによる食中毒になったという事例が多発しています。この細菌は生の鶏肉(内臓を含む)の50パーセント以上に付着していると言われています。
また、焼肉店などで牛の生レバーを食べたことによるO157やカンピロバクターの食中毒も発生しています。
現在、一部の刺身用の馬肉(指定された衛生的な処理場で扱われたもの)以外は生食用の食肉は流通していません。興味本位で注文したりいくら新鮮なものでも生で食べることはとても危険ですからやめましょう。なお、加熱するときも中心部まで十分加熱(75度1分間以上)し、生焼けによる食中毒にも気をつけましょう。
なお、カンピロバクターによる食中毒の後には「ギランバレー症候群※1」、O157食中毒は重篤になると「溶血性尿毒症症候群(HUS)※2」になるおそれもあります。
カンピロバクター
腸管出血性大腸菌157
生カキの生食〜生食用のものを消費期限内に!
生カキのパックの表示を良く見てください。「生食用」と「加熱用」がありますね。もちろん生食用の表示のあるものを消費期限内に召し上がってください。新鮮そうだからと生食用以外のものを生で食べないでください。ノロウイルスによる食中毒になるおそれがあります。
また、期限が過ぎてしまったら、鍋などで中心部まで十分加熱(85度1分間以上)して食べてください。
ノロウイルス
卵の生食〜10度以下に保存し賞味期限内に!
生卵は購入したらすぐ冷蔵庫へ。賞味期限は10度以下の保存が条件ですからお気をつけください。もし冷蔵するのを忘れたり、賞味期限を過ぎてしまったら中心部まで十分加熱(75度1分間以上)してから食べてください。
期限を過ぎた卵を十分に加熱せず、半熟やとろとろ状態のまま食べるとサルモネラ菌による食中毒になるおそれがあります。
サルモネラ菌
お刺身、生野菜〜新鮮、清潔第一に!
お刺身は新鮮なうちに早く食べましょう。夏場に多い魚介類の食中毒の原因は、腸炎ビブリオによるものです。この菌は増殖するのが他の食中毒菌に比べ非常に速いので、冷蔵のうえ早く食べてください。また、アニサキスなどの寄生虫にも注意が必要です。
サラダなどの生野菜は、良く水洗いをしてよごれを落とし、きれいに洗った手で取り扱いましょう。直前に鶏肉を扱った場合、手洗いをきちんとしないとカンピロバクターを付けてしまうかも知れません。また、同じように生カキを扱った後に手洗いが不十分だとノロウイルスを付着させてしまうおそれがあります。両方ともごく少量(100個程度)で食中毒を起こす可能性がありますから、事前の手洗いが重要です。
アニサキス
その他の生食〜変わったものにも注意!
その他には、「シジミの酒漬」でノロウイルスやA型肝炎ウイルス、「スッポンの生血」でサルモネラや寄生虫、「豚生レバー」でE型肝炎ウイルス、「ホタルイカ」「シラウオ」「ドジョウ」「ヘビ肉」「くま肉(ルイベ)」では寄生虫などにも感染することがありますから、注意してください。
食品の生食についての注意を掲げてみましたが、いかがだったでしょうか。カンピロバクターやノロウイルスによる食中毒だけではなく、肝炎ウイルスや寄生虫による食品媒介感染症も増加しているとの報告もあります。様々な食品の生食だけでなく、輸入食品や海外での感染なども考えられますが、一番の予防は十分に加熱してから食べることです。
また、取り扱う前の手洗いがとても重要です。気をつけてお召し上がりください。
※1「ギランバレー症候群」
カンピロバクターによる食中毒が治った後、1週間から3週間後に発症のおそれがあります。ボツリヌス食中毒に似た症状で、手足の軽いしびれ感から始まり、下肢の麻痺、歩行困難、脳神経麻痺、呼吸筋麻痺などで、重篤になると死亡することもあります。
※2「溶血性尿毒症症候群(HUS)」
一般にHUSは、腸管出血性大腸菌O157による食中毒の後、約1パーセントから10パーセントに発症し、下痢あるいは発熱出現後4日から10日に発症することが多いようです。下痢が軽快した後に腹痛、元気がない、尿量が少ない、浮腫、出血斑、頭痛、傾眠傾向(眠りたがる)、不穏、けいれん、血尿、蛋白尿などの症状が出てくると要注意です。その後、急速に進行します。また、約4分の1から3分の1は何らかの中枢神経症状が見られます。大体は自然に治癒しますが、重症になったり死亡することがあります。
お問い合わせ
このページの担当は 多摩府中保健所 生活環境安全課 食品衛生第一係 です。
東京都福祉保健局 〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号