あんなに空想を膨らませながら、発掘調査の記事を書いたのは初めてだったかもしれない。奈良市の西大寺旧境内から、奈良時代のイスラム陶器の破片が見つかったニュース。西アジアからやって来たつぼの中には、一体何が入っていたのだろうか。
当時は称徳天皇の時代で、道鏡が政治の表舞台にいた。西大寺は2人が建立に力を注いだ寺だ。その寺で、2人が青緑色に輝く陶器の中に入った西アジアの高級食材を食べていた、などと考えるのも面白い。見つかったものは小さな破片だけ。それがこんなにも想像を広げてくれるのは、ここが奈良だからだ。仏像や建造物だけではない。奈良は土の下も魅力的だ。(花澤)
毎日新聞 2009年7月15日 地方版