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児童虐待:親権の一時停止を検討、虐待から保護 法務省が研究会

 親による児童虐待から子供を守るため、法務省は2日、親権の一部・一時停止の可否を検討する研究会を発足させた。現行民法は親権の「喪失」手続きのみを定めるが、親子関係を壊すなど重大な影響を与える懸念から適用には慎重にならざるを得ないため、親の立ち直りを視野に入れた措置の導入を議論する。日本の家族制度を定めた民法の家族法分野の見直し作業に踏み込む見通しとなる。

 虐待された子供が児童養護施設などに保護されても、親権を理由に親が子供の引き取りを主張しトラブルになるケースは多い。

 親族らの申し立てを受けて家庭裁判所が親権はく奪を宣告する「親権喪失」は可能だが、回復は困難だ。このため、いったん親権を停止後、親に改善がみられれば親権を回復させる柔軟な措置の必要が長年指摘されてきた。

 昨年4月に施行された改正児童虐待防止法では児童相談所に異例の強制立ち入り調査権を付与し、施設に保護された子への面会制限の強化や、子への接近禁止命令などが盛り込まれた。面会制限や接近禁止は親権を部分的に制限するものだが、民法改正につながる抜本的な親権見直しには踏み込めず、施行から3年をめどに検討することとしていた。

 研究会は、法務省のほか家族法分野の研究者や弁護士、厚生労働省の担当者らで構成。来年1月までをめどに親権の一時停止などの是非を検討し、民法改正が必要と判断した場合は法相の諮問機関である法制審議会に諮問する。子供に必要な治療を受けさせずに放置する「医療ネグレクト」なども議論される見込み。【石川淳一】

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 ■解説

 ◇増え続ける事件、「喪失」では限界

 法務省が親権の一部・一時停止の検討を始めたのは、児童相談所の8割が必要と感じるなど現場の切実な思いが背景にある。

 虐待を繰り返す親から子供を守る最終手段は、現行では親権喪失しかない。「『絶対虐待しない』と感じられれば親といたい子供は多い」(首都圏の児童養護施設長)のに、親権を一度失えば回復は困難だ。喪失宣告の請求は07年に4件、06年3件。「親が取り消しを求めて提訴する場合もあり、多くの児相には重荷」(申し立て経験のある九州の元児相所長)なのが実情だ。

 このため児相などは、いったん親権をとめた後、親がカウンセリングなどの指導を受け入れ改善がみられれば親権を回復させる「一時停止」の措置を切望。だが、00年の児童虐待防止法制定時に盛り込まれず、04年と07年の改正でも先送りされた。民法見直しという大作業につながるため、その煩雑さからなかなか手を付けられなかったとされる。しかし、児童虐待件数は過去18年間で36倍も増加し、見直しは待ったなしとなった。「親子のやり直し」のため、実現が急がれる。【野倉恵】

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 ■ことば

 ◇親権

 民法は、未成年の子は父母に親権があると定めており、権利と義務の双方の意味合いがある。子の保護・監督や教育、財産管理などに範囲が及ぶ。虐待などの親権乱用があった場合には、親族や児童相談所長は家庭裁判所に喪失宣告を請求できる。

毎日新聞 2009年6月3日 中部朝刊

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