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食のココロ

Dokudami

以前、ベトナム旅行に行ったことがあるのだけれど、その時に驚いたのは「使うハーブの多さ」だった。とにかく料理に、生の葉っぱがどっさり付いてくる。それを皆、ババッと入れて食べる。日本で、香草は高い。エスニック料理屋なんかでも、追加で頼むと、小皿にちょろっと乗ったやつが、数百円とかする。それなのに、ベトナムでは、この気前良い盛りっぷり!葉っぱてんこもり!

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ベトナム滞在時の写真。ね、薬味いっぱい入ってるでしょ? この中の、さくらの葉っぱのような形のものが、多分、ベトナムのドクダミ。日本のものとは、微妙に種類が違うようです(あ、あとこのライムのような柑橘類、切断面が不思議ですよね!?)

現地の人がパクパ食べているので、私もおそるおそる、葉っぱを入れて料理を食べた。これが新鮮な味だった。ハーブにはいろんな種類があって、それがそれぞれ別方向のフレイバーが、口の中ではじけた。

ふわー。

立体的な味だな、と思った。
日本にはあまりない味。日本だったら、シソとはシソ、山椒は山椒と、単品で味付けするのに…。シソと山椒とミョウガとショウガとネギをいっぺんに口に放り込もう、なんて、日本人は思わないし…。(やってみたら、美味しいかもしれないけれど)。

その様々なハーブの中で、ひとつ、強い味があった。 ドクダミだ。 日本では、生ではまず食べない野草だけれど、ベトナムではとても愛されている葉っぱ。最初口に入れた時は「ウッ」となったが、食べ続けるうち、平気になった。そして「この味を理解したい」と、舌に神経を集中させるようになった。

結局、理解出来たかどうだか、自分でも分からなかった。帰国してから、たまに「あー、あのドクダミ、もう一回食べてみたい」と思う。体験したい、と思う。

で、昨今。 庭、っていうかアパートの共有スペースに、青々と、ドクダミが茂っているのを発見。そうだよ、日本にも生えてるんだよなあ、と、しばらく眺めていたのだが…。若い葉がライトグリーンで、やわらかそうで、なかなか美味しそうで…。

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花もキレイ…。

これは食べても大丈夫なんじゃないのか?  と思ってしまい、エスニック食品の売っているスーパーへダッシュ。ベトナムうどん、フォーの麺とスープを買ってきた。

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フォーって、日本では「あっさりした食べ物」と思われているけど、ベトナム人の方には、そんな感覚は無いらしい。日本人が外国人に「寿司ってヘルシーだよね?」って言われるような違和感なのかも。

さあ、採取。なにせ庭だ、ゲットする苦労ゼロ。ちゃっきり、ちゃっきり。

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かわいい葉っぱ。

つむと、指先から、あの匂いがたちのぼってくる。そうそう、この匂い。なんともいえない、青い香り。良い匂いか良くない匂いか分からないけれど、忘れられない匂い。

花の開花期が5~7月だそうから、今が食べ時かも(秋口になると、紫色っぽくなりますよね)。

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他のハーブと一緒に、お皿に盛ってみた。うーん、それっぽい。

固形スープを溶かし、春雨を茹で、生たまねぎを散らし、蒸し鶏を入れて、鶏肉のフォーを作ってみた。

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初めて作ったわりに、上手く出来た。

その上に、葉っぱをドカンと乗せる。

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うーん、見かけはそれなりにイケてるけど…。

自分で作っておいてなんなんだが、食べるのを躊躇した。じっと見つめる。箸を持つ。えいやあっ。思いきって試食。 ふわー。 鼻に匂いが立ち上る。 うーん? いや、食べられる、けど……。だけど……。確かに、この香りだ。でも、ベトナムで食べた感じと違う。もっとまろやかで、フォーの麺にとても合っていたような気がする……。あのベトナムの空気の中で食べたから、美味しく感じたのかな? いや、そういうことでもないな。単純に、日本のドクダミはちょっと、味も香りも強過ぎるんじゃないか?

つまりだ。 これ、きざんで、量を控えめにして、入れると美味しいんだと思う。シソやミョウガのような使い方…、味の濃いものや、脂っぽいものに、ちょこっと入れたりするほうが、いいのかもしれない。肉料理のアクセントにしてみたらどうだろう。ミートボールに入れたり。刺身に添えたりするのも、いいかもしれない。カツオとか、強い味の魚に。

とにかく、なんとか普通に食べられることは分かったので、今度、よりベターな調理法を試してみようと思った。リトライ決意!! しかし、地べたから勝手に生えてくるものを食べる、って、やはりドキドキする。だって野草って、雑草ですよ。庭に生えてる雑草のくせに、香り高く美味しいなんて、ねえ。

追記
ベトナム料理店スタッフの知人からきいたところ、なんと今、日本で、ベトナムのハーブを、試験的に栽培しているんだとか。そう、ハーブの洪水。あの味がなくちゃ、リアルなベトナム料理じゃない。数年後には、ベトナムのドクダミが、近所で食べられるようになっているかも。来るかな、ドクダミブーム……!!


大塚 幸代

大塚 幸代(おおつかゆきよ)
1972年埼玉生まれ。学生ライターを経て、1996年~2001年まで雑誌『クイック・ジャパン』編集部に在籍、現在フリー。ネット、雑誌を中心に活動。『「ライ麦畑」の正しい読み方』(飛鳥新社刊、共著)発売中。
> 個人サイト 日々の凧あげ通信


コメント

DPZから来ました。最近は隔週でしかお会いできず残念だと思っていましたが、これからはまた大塚さんの楽しい食記事がみられると知り、とてもうれしいです。ドクダミ、日本の気候にもバッチリなんですね!

投稿: フォー | 2009年6月30日 (火) 05時09分

どくだみはお茶でなら飲んだことあります。体に良いそうで。
お箸やお茶碗の模様がかわいいですね。
違う野草にもぜひトライを期待してます!

投稿: およよ | 2009年7月 2日 (木) 20時39分

昔から、どくだみの匂いはパクチーと同じだと思ってましたが、
実際食べてみてそう感じませんでした?

ちなみにどくだみ=パクチー説は今のところ
私と父親しか賛同者がおりませんwww

投稿: はじめ | 2009年7月 4日 (土) 21時10分