【バルセロナ=瀬川茂子】iPS細胞(人工多能性幹細胞)から体のさまざまな細胞を作って移植する際、元になる細胞の種類によって、腫瘍(しゅよう)のできやすさに違いがあることを、京都大の山中伸弥教授らが突き止めた。iPS細胞の応用では、腫瘍ができる危険を減らすことが課題になっており、元の細胞をうまく選ぶことで、安全性向上につながると期待される。
この成果について9日、バルセロナで開催中の国際幹細胞学会で発表した。
山中教授や慶応大の岡野栄之教授らは、マウス胎児の皮膚や大人のしっぽや胃、肝臓など様々な細胞をもとに、36種のiPS細胞を作った。それらのiPS細胞から、神経のもとになる細胞を作り出して、マウスに移植して、腫瘍ができるかどうかを調べた。
その結果、しっぽの皮膚の細胞から作ったiPS細胞では、8割以上で腫瘍ができたが、胎児の皮膚から作ったもので、腫瘍ができたのは4割以下、肝臓でも腫瘍は3割以下だった。
山中教授は「今後、ヒトのiPS細胞でも同じか、神経系の細胞以外ではどうか、調べたい。移植を検討するには、どの細胞からiPS細胞を作れば、安全なのか、早く絞り込む必要がある」と話している。
この結果は、米専門誌ネイチャーバイオテクノロジーでも発表する。