2009年07月09日
[NEW]嵐のように現れて風のように去ってった「月光仮面」みたいな…!
先日の水曜日昼--。
夜から始まる地獄のサーキットトレーニングに備え、ゆっくりと睡眠をとっていたら玄関のチャイムが鳴りました。タルイので無視をすると何度もしつこくピンポン鳴を鳴らし、止む気配がありません。
異常です!!
オヤジも「うるせえなあ、怒鳴りつけてやれ!」というので仕方なく1階エントランスの玄関を開放し、自宅のドアに設置した防犯用カメラの映像を覗いていたら、なんとそこには祖父と祖母の姿がありました。何やら2人の手にはトウモロコシなどの野菜や果物が入った箱がいくつも紐でぶら下がっていました。
「突然どうしたの?」
自分が驚きながら聞くと、2人は何事もないように「暇だったからフラッと寄ってみたのよ」と言うや否や勝手に部屋に上がってきました。
昔からそうなんですが、祖父母が事前に遊びに行くと電話をかけてきたことはほんどありません。いつも突然やってくるのです。逆に電話をして予告するときにかぎって「急用が入ったからあとで行くよ」と自分たちを振り回します。まるで夫婦揃って映画の寅さんの世界です。
オヤジも前日は徹夜で仕事をしていたので寝ていました。というより寝たのが午前10時頃だったといいます。けれど、祖父母の襲来で寝ているどころではなくなってしまいました。結局自分とオヤジは泣く泣く起きることに…。
昼食はとりあえず出前の蕎麦で済ましました。
祖父はもう80歳近いというのにオヤジ以上のパワーでどうでもいいような話を延々と続ける始末。祖母は気がつくとキッチンに入りさっそく夕飯の準備やらトウモロコシを茹でたり持参したトマトを切ったりひとときも落ち着いていません。
オヤジはそんな2人に慣れているからか、もう完全に無気力に寝ているのか起きているのか分からない状態で居間にゴロンとしています。でも自分はそういうわけにはいきません。祖父は賭け将棋で鍛えた元ヤクザですからやたらと将棋の話をします。自分は将棋もできますけど今は囲碁が本業なので囲碁の話をします。完全にすれ違いです。
いつの間にか祖父はサイコロ博打や花札の技術、八百長のやり方や見分け方など、今まで何度も聞かされた話をまたまた延々と続けます。そのうち話はどんどんヤバい方向に流れて刀の話題。
ダンビラがどうでドスがどうだとか、本物の昔の日本刀と軍刀がどう違っていて、銃剣はどうだとか。なぜ腹に晒しを巻くのかとか、刺すときはドスを横にしてから捻るとか…。
そういうときだけオヤジはうっすらと目を開けて笑っています。きっと普通の人が祖父の話を聞いたらあまりに物騒で途中で席を立つと思います。それを笑っているオヤジは、やっぱり祖父の息子なんだと変に感心したり、「ということは自分にもそんな血が流れているのか!?」とハッとしたり…。
祖母は祖母で実家から持ってきたナスやキューリのお新香を切ったり、煮物を作ったりキッチンから出てきません。
陽も暮れた頃、オヤジは自分に風呂の掃除をさせ湯を沸かせ(この日は家政婦さんが休みでした)、無理に祖父と祖母にお風呂に入らせました。
料理の準備ができてテーブル一杯にご馳走が並びました。祖父は持参した日本酒を飲み出し、祖母もビールを飲み始めました。
しかし自分とオヤジはまだまだ食事どころではありません。これから1週間で最も辛いサーキット・トレーニングが待ってるのです。
オヤジはまだ体調がよくないのでトレーニングウェアには着替えたものの、動こうとしません。ただトレーニングのメニューを書いて自分に指示するだけ。最初はウェイトトレーニングのサーキットです。
すると、さっきまで酒を呑みながらテレビをつけ、雑談していた祖父と祖母が自分の練習を真剣に見つめ出したのです。祖母は70歳近いのに自分がやる40ー50キロのバーベルに興味を示し、インターバルのときに持ち上げようとしたりします。さすがに無理ですけど…。
夜から始まる地獄のサーキットトレーニングに備え、ゆっくりと睡眠をとっていたら玄関のチャイムが鳴りました。タルイので無視をすると何度もしつこくピンポン鳴を鳴らし、止む気配がありません。
異常です!!
オヤジも「うるせえなあ、怒鳴りつけてやれ!」というので仕方なく1階エントランスの玄関を開放し、自宅のドアに設置した防犯用カメラの映像を覗いていたら、なんとそこには祖父と祖母の姿がありました。何やら2人の手にはトウモロコシなどの野菜や果物が入った箱がいくつも紐でぶら下がっていました。
「突然どうしたの?」
自分が驚きながら聞くと、2人は何事もないように「暇だったからフラッと寄ってみたのよ」と言うや否や勝手に部屋に上がってきました。
昔からそうなんですが、祖父母が事前に遊びに行くと電話をかけてきたことはほんどありません。いつも突然やってくるのです。逆に電話をして予告するときにかぎって「急用が入ったからあとで行くよ」と自分たちを振り回します。まるで夫婦揃って映画の寅さんの世界です。
オヤジも前日は徹夜で仕事をしていたので寝ていました。というより寝たのが午前10時頃だったといいます。けれど、祖父母の襲来で寝ているどころではなくなってしまいました。結局自分とオヤジは泣く泣く起きることに…。
昼食はとりあえず出前の蕎麦で済ましました。
祖父はもう80歳近いというのにオヤジ以上のパワーでどうでもいいような話を延々と続ける始末。祖母は気がつくとキッチンに入りさっそく夕飯の準備やらトウモロコシを茹でたり持参したトマトを切ったりひとときも落ち着いていません。
オヤジはそんな2人に慣れているからか、もう完全に無気力に寝ているのか起きているのか分からない状態で居間にゴロンとしています。でも自分はそういうわけにはいきません。祖父は賭け将棋で鍛えた元ヤクザですからやたらと将棋の話をします。自分は将棋もできますけど今は囲碁が本業なので囲碁の話をします。完全にすれ違いです。
いつの間にか祖父はサイコロ博打や花札の技術、八百長のやり方や見分け方など、今まで何度も聞かされた話をまたまた延々と続けます。そのうち話はどんどんヤバい方向に流れて刀の話題。
ダンビラがどうでドスがどうだとか、本物の昔の日本刀と軍刀がどう違っていて、銃剣はどうだとか。なぜ腹に晒しを巻くのかとか、刺すときはドスを横にしてから捻るとか…。
そういうときだけオヤジはうっすらと目を開けて笑っています。きっと普通の人が祖父の話を聞いたらあまりに物騒で途中で席を立つと思います。それを笑っているオヤジは、やっぱり祖父の息子なんだと変に感心したり、「ということは自分にもそんな血が流れているのか!?」とハッとしたり…。
祖母は祖母で実家から持ってきたナスやキューリのお新香を切ったり、煮物を作ったりキッチンから出てきません。
陽も暮れた頃、オヤジは自分に風呂の掃除をさせ湯を沸かせ(この日は家政婦さんが休みでした)、無理に祖父と祖母にお風呂に入らせました。
料理の準備ができてテーブル一杯にご馳走が並びました。祖父は持参した日本酒を飲み出し、祖母もビールを飲み始めました。
しかし自分とオヤジはまだまだ食事どころではありません。これから1週間で最も辛いサーキット・トレーニングが待ってるのです。
オヤジはまだ体調がよくないのでトレーニングウェアには着替えたものの、動こうとしません。ただトレーニングのメニューを書いて自分に指示するだけ。最初はウェイトトレーニングのサーキットです。
すると、さっきまで酒を呑みながらテレビをつけ、雑談していた祖父と祖母が自分の練習を真剣に見つめ出したのです。祖母は70歳近いのに自分がやる40ー50キロのバーベルに興味を示し、インターバルのときに持ち上げようとしたりします。さすがに無理ですけど…。
祖父はテレビを消すと「オマエやカズシが空手やってるビデオとかねえの?」と言い出すので、自分が某会の総会稽古会を記録したDVDをかけると、DVDを見たり自分のトレーニングをみたり大忙しです。
ウェイトはサーキットでしたが今回はフリーハンドのサーキットはやらず、代わりに色々なフリーハンド・トレーニングを1種目ずつじっくりやらされました。腕立て伏せ系のトレーニングが10種目、下半身というよりジャンプ系のトレーニングが10種目。
フリーハンドがウェイトよりこんなにキツいものかと改めて実感するとともに「自分の体を自分の力でコントロールできないで空手なんか無理」と自分におっしゃった松井館長の言葉の重みを改めて噛み締めました。
続いてスキルトレーニングに移りました。この時点で時間は軽く2時間を越えていますが、相変わらず祖父たちは真剣に自分のトレーニングを見たりDVDを見たりして、祖父はDVDで指導するオヤジの技術について質問するし、オヤジもなかなか自分のトレーニング指導に集中できません。
スキルトレーニングは道着に着替えて空手の動きをするので、祖父母の興味はますます高くなったようです。
いくつもの蹴りやパンチをシャドーでやったりオヤジが持つミットに出したりしていると、また祖母がシャシャリ出てきて自分の技の真似を始めました。
「オマエの10人組手のときも全日本少年大会で活躍したときもバアちゃんは見に行ったけど泣いちゃったよ。あんな子供なのに大変な思いをしてね。でもこんなに大きくなったら安心だわ。よく続けてきたねえ」
なんて言いながら回し蹴りの真似をする祖母に少し感動してしまいました。
ラストに近づくとトレーニングは厳しさを急激に増していきます。最後の「人間サンドバッグ」だけはオヤジが1分間自分に強烈な蹴りやパンチを連打します。これを数セット、自分は歯を食い縛って我慢し、オヤジは全然衰えを感じさせない蹴りやパンチで自分を攻撃します。
このときだけ祖父母は唖然として見ていた…ような気がします。
これでメインのトレーニングは終わりで、最後はストレッチや腹筋運動です。またもや祖母は私の隣で同じことをやり始めます。腹筋運動などは10種類以上あって自分でもキツいのに、なんと驚くことに祖母は自分がやる半分近く同じ運動をしてしまいます。
「私も歩け歩け会でもう5年以上やってるし腹筋も毎日やってるよ。400メートルのダッシュも5回やってるんだからね」
脱帽です。書道4段、大正琴コンクールで優勝、民謡大会で入賞…。オヤジのお袋さまはタダ者ではありません。オヤジの会社をひとりで仕切るTさん並のパワーを70近いお婆さんが持っているなんて!
本当に元気な祖母です。
祖父は祖父で、トレーニングを終えて祖母が作ってくれた料理を夢中で食べる自分とオヤジの姿を見ながら「オマエらすごいなあ」と、自分の息子や孫が誇らしい…祖父の目は輝いていました。
食事が終わったのは深夜1時を軽く過ぎていました。いつもは午後9時には寝てしまう祖父母もこの日は起きてずっと自分たちの練習を見守ってくれていたのです。
それから自分たちは風呂に入り、祖父母2人は床につきました。
翌朝、6時頃に目を覚ますと、もう祖父母の姿はありませんでした。テーブルに祖母と祖父の書き置きの紙がありました。
「道が混まないうちに帰る。タイシの空手の大会には見に行くから優勝目指せ じいちゃん」
「ゆっくり話せないでごめんね。玉子焼きを作っておいたからあとでチンして食べてね。私もタイシの腹筋やるからね、ばあちゃん」
「嵐のようにやって来て風のように去っていったよな。まるで月光仮面夫婦だな。本当に迷惑だよ、次来るときは事前に言えっていうんだ…」
自分に愚痴を語りかけるオヤジでしたが、とても嬉しそうな顔をしていました。自分もあんな祖父母が改めて大好きになりました。
(了)
ウェイトはサーキットでしたが今回はフリーハンドのサーキットはやらず、代わりに色々なフリーハンド・トレーニングを1種目ずつじっくりやらされました。腕立て伏せ系のトレーニングが10種目、下半身というよりジャンプ系のトレーニングが10種目。
フリーハンドがウェイトよりこんなにキツいものかと改めて実感するとともに「自分の体を自分の力でコントロールできないで空手なんか無理」と自分におっしゃった松井館長の言葉の重みを改めて噛み締めました。
続いてスキルトレーニングに移りました。この時点で時間は軽く2時間を越えていますが、相変わらず祖父たちは真剣に自分のトレーニングを見たりDVDを見たりして、祖父はDVDで指導するオヤジの技術について質問するし、オヤジもなかなか自分のトレーニング指導に集中できません。
スキルトレーニングは道着に着替えて空手の動きをするので、祖父母の興味はますます高くなったようです。
いくつもの蹴りやパンチをシャドーでやったりオヤジが持つミットに出したりしていると、また祖母がシャシャリ出てきて自分の技の真似を始めました。
「オマエの10人組手のときも全日本少年大会で活躍したときもバアちゃんは見に行ったけど泣いちゃったよ。あんな子供なのに大変な思いをしてね。でもこんなに大きくなったら安心だわ。よく続けてきたねえ」
なんて言いながら回し蹴りの真似をする祖母に少し感動してしまいました。
ラストに近づくとトレーニングは厳しさを急激に増していきます。最後の「人間サンドバッグ」だけはオヤジが1分間自分に強烈な蹴りやパンチを連打します。これを数セット、自分は歯を食い縛って我慢し、オヤジは全然衰えを感じさせない蹴りやパンチで自分を攻撃します。
このときだけ祖父母は唖然として見ていた…ような気がします。
これでメインのトレーニングは終わりで、最後はストレッチや腹筋運動です。またもや祖母は私の隣で同じことをやり始めます。腹筋運動などは10種類以上あって自分でもキツいのに、なんと驚くことに祖母は自分がやる半分近く同じ運動をしてしまいます。
「私も歩け歩け会でもう5年以上やってるし腹筋も毎日やってるよ。400メートルのダッシュも5回やってるんだからね」
脱帽です。書道4段、大正琴コンクールで優勝、民謡大会で入賞…。オヤジのお袋さまはタダ者ではありません。オヤジの会社をひとりで仕切るTさん並のパワーを70近いお婆さんが持っているなんて!
本当に元気な祖母です。
祖父は祖父で、トレーニングを終えて祖母が作ってくれた料理を夢中で食べる自分とオヤジの姿を見ながら「オマエらすごいなあ」と、自分の息子や孫が誇らしい…祖父の目は輝いていました。
食事が終わったのは深夜1時を軽く過ぎていました。いつもは午後9時には寝てしまう祖父母もこの日は起きてずっと自分たちの練習を見守ってくれていたのです。
それから自分たちは風呂に入り、祖父母2人は床につきました。
翌朝、6時頃に目を覚ますと、もう祖父母の姿はありませんでした。テーブルに祖母と祖父の書き置きの紙がありました。
「道が混まないうちに帰る。タイシの空手の大会には見に行くから優勝目指せ じいちゃん」
「ゆっくり話せないでごめんね。玉子焼きを作っておいたからあとでチンして食べてね。私もタイシの腹筋やるからね、ばあちゃん」
「嵐のようにやって来て風のように去っていったよな。まるで月光仮面夫婦だな。本当に迷惑だよ、次来るときは事前に言えっていうんだ…」
自分に愚痴を語りかけるオヤジでしたが、とても嬉しそうな顔をしていました。自分もあんな祖父母が改めて大好きになりました。
(了)