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<歴史観の狭間で 大田原・歴史教科書採択>(中)議論の壁 歴史認識踏み込めず 保護者の関心、反応は希薄(7月2日 05:00)本年度の教科書採択を控えた6月中旬。大田原市内の40代男性保護者は妻に歴史教科書の話題を振ってみた。 「4年前にそんなこともあったね」。素っ気ない返事が返ってきて話題は続かなかった。男性は「一般の保護者レベルでは正直そんなところでしょうね」と苦笑いを見せる。 黒羽地区の40代女性保護者にとって、親同士の会話は塾や部活が中心。「教科書ごとの違いが分からないし、そもそも関心がない」 東京工業大大学院の橋爪大三郎教授(社会学)は「当然の反応。保護者は子どもの将来を考え進学を気に掛ける」と分析。「歴史は主要科目ではないし、議論が分かれる部分は試験に出ない」と優先順位の低さを指摘する。 教科書問題について、歴史観の対立にまで踏み込んだ議論を避ける向きもある。中学1年生の息子を持つ市内の男性会社員(47)は「話題に上っても率直な意見は言いづらい」と漏らす。文部科学省検定に合格した教科書への安心感もあり、なおさら議論する必要性を感じないという。過去の採択にかかわったことがあるPTA関係者によると、採択に際して保護者から意見や反応が寄せられることはなかったという。 教育現場で教科書を使う教員側にも“議論のしづらさ”が見え隠れする。 中学社会を担当したことがある那須地区の50代男性教諭は「理科などの教科書ならグラフの見やすさなどを客観的に比較できる。個人の背景で見方が変わる歴史教科書は議論が難しい」と打ち明ける。 宇都宮大学教育学部の藤井佐知子教授(教育行政学)は「教科書採択に限らず、教員や保護者、住民が主人公となり地域の教育づくりを進めることが地方分権時代の真の教育の姿」と指摘する。その上で、「まず保護者や教員間で議論をすることが重要。しかし議論の場で言いっぱなしではなく、建設的に意見を集約し、改善や政策につなげていく新たな枠組みが必要だ」と提言する。 採択候補の教科書を一堂に展示し、一般にも公開している大田原教科書センター。教育委員など採択作業の当事者らが足しげく通う。事実、閲覧者名簿に並ぶ肩書は教育委員や教員ばかり。「閲覧者すべてが記帳するわけではないだろうが、関心があればもっと保護者らも来るはず」(市教委学校教育課)。6月末現在、一般市民の記帳はない。 [写真説明]採択候補の教科書が一堂に並ぶ大田原教科書センター。休日の閲覧者はまばらだ
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