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<歴史観の狭間で 大田原・歴史教科書採択>(下)地域の日韓関係 交流への道閉ざさず 課題克服は民間の努力で

(7月3日 05:00)

 中年女性のバッグには韓流スターのCDなどがぎっしりと詰まっている。人気ドラマ「冬のソナタ」で火がついた韓流ブーム。大田原市内の公民館で開かれている韓国語講座ではブームが一過性に終わっていないことがうかがえる。

 「抗議だけでない角度から、韓日友好のアプローチが必要」

 昨年末、在日韓国人らで組織する青年会が同講座を訪れカレンダーを寄贈した。「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学歴史教科書採択がきっかけとなって始まった新たな交流だ。

 もともと民間交流が活発な大田原市と韓国。市内のゴルフ場を会場に日韓対抗中学高校生ゴルフ選手権が毎年開かれ、市が特別後援、在日本大韓民国民団(民団)も後援に名を連ねる。市内の芸術イベントにも韓国人彫刻家が参加するなど芸術分野での交流もある。

 その一方、4年前の教科書採択では歴史認識の違いが波紋を広げた。

 「これだけ交流しているのに、なぜつくる会の教科書なのか」。4年前、抗議活動を行った民団県地方本部の金一雄団長は当時の心境を振り返る。

 同本部がつくる会系の教科書を問題視するのは特に韓国併合の記述。「日本の安全と満州の権益を守るためには、韓国の併合が必要であると考えた」との記述に対し、同本部は「植民地支配の反省が欠落している。弱肉強食の支配を正当化している」などと反発する。

 つくる会県支部のメンバーは「植民地支配については争う余地がない。ただ、教科書は日本の視点で書くことが大事だ」と反論する。

 食い違う主張。着地点を見いだすのは困難な作業となる。「日本人の誇りを持ってもらう」(つくる会メンバー)ことをテーマにしたつくる会系歴史教科書。金団長の目には「この教科書で学ぶ在日の子どもたちが、韓国に誇りを持てなくなる。だから声を上げなくてはいけない」と映る。

 「採択と交流は関係ない」。市民韓国語講座で学ぶ60代男性は、教科書問題を冷静に受け止める。交流する同青年会の金宗洙会長も考えは同じだ。「再び採択されても交流を途絶えさせてはいけない。草の根の努力で歴史認識の課題を乗り越えたい」。民間文化交流は教科書問題の対立を超え、続く兆しをみせている。

 [写真説明]市民韓国語講座にハングル月暦のカレンダーを寄贈する金会長(左)。教科書問題を機に始まった交流だ(昨年12月)


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