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7年にわたった国の第5次病院事業健全化計画で、55億円もの不良債務(資金不足)解消を目指してきたむつ市のむつ総合病院(小川克弘院長)が、何とか最終年度の08年度で達成した。しかし、病院を運営する一部事務組合「下北医療センター」(管理者・宮下順一郎むつ市長、10病院・診療所)全体の不良債務は59億円も残っており、医療機器導入などのための起債に制限を受けるなど、運営に大きな支障が出る可能性が出ている。【松沢康】
むつ総合病院は不良債務を抱えて02年度から国の第5次病院事業経営健全化団体に指定され、健全化計画が始まった。市の一般会計からの繰り入れ、国や県の補助を受ける一方、医師を除く職員給与のカット、管理職手当削減、材料費削減などで不良債務を減らし続けた。最終の08年度、約12億5000万円は外来患者数の減少もあり、不足分を補う形で市から2億9000万円を繰り入れ、3000万円の剰余金が出た。これで何とか不良債務ゼロを達成することができた。
だが楽観はできない。国は、07年に公立病院の経営効率化や再編・ネットワーク化などを目指す「公立病院改革ガイドライン」を策定した。下北医療センターはこれに基づき、改革プラン(09~13年度)をまとめた。5年で59億7400万円の不良債務を解消する計画だ。特にむつ市の大畑診療所の不良債務は24億5500万円、川内診療所15億6100万円、風間浦村の風間浦診療所が6億2100万円と、巨額の解消額となっている。
大畑診療所は改革プランの一環として指定管理者制度を導入し、経費削減を図っている。大畑を含むむつ市関係分の不良債務は48億2300万円。下北医療センターは「市からの繰り入れは避けられないが、むつ病院への繰り入れが浮いた分をほかに回せる。5年間でクリアできる」とむつ市関係分のクリアに自信を持っている。
一方、風間浦診療所の6億2100万円は年1億2000万円余りを解消しなければならない計算。村は指定管理者制度を導入しているが、財政規模は今年度当初予算で約22億9000万円。当初予算で村からの繰り入れ2000万円を計上したが、村総務課は「補正でなるべく多く解消しようと検討しているが、5年間での解消は厳しい状態」と話している。
財政健全化法では、不良債務比率(医業収益に占める不良債務の割合)が20%を超えると、起債制限を受ける。改革プラン通りに着実に不良債務を減らしていかなければならない。むつ総合病院は7年かけて資金不足をゼロにしたが、医療センター全体では5年で達成しなければならず、厳しい道のりだ。県市町村振興課は「改革プランは『絵に描いた餅』で作成したわけではない。プランの着実な実行が求められる。計画の途中でも達成できない理由を確認し、プランの見直しもありうる」という基本姿勢を見せている。
県の担当者は「医療サービスの提供体制と経営効率化という両輪を考えていかなければ、医療機関が維持できなくなり、元も子もなくなる」と、地域医療体制を守るために各自治体が一丸となって実行することを求めている。
毎日新聞 2009年7月6日 地方版