HOMECLAIR 刊行物クレア海外通信(海外事務所だより)ソウル事務所|国語純化運動
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国語純化運動


ボタン はじめに

ボタン 国語純化運動とは?
ボタン 各方面での運動内容

ボタン
これからの運動の行方
ボタン おわりに



ボタンはじめに

 韓国で暮らして感じることの1つに、韓国の人々が自分たちの文化をとても誇りに思い、大事にしていることが挙げられる。こうした特徴を「言葉の改善運動」という形で最もよく表しているのが、今回紹介する「国語純化運動」である。




ボタンわざわざ足を運ぶ必要なし

 国語純化運動は、韓国が日本の統治から解放された第二次大戦後に現れた、外国語を使わず、正しく美しくやさしい言葉を使おうとうい社会的な風潮が起源となっている。その後国家対策として位置付けられ積極的な運動が始まったのは、朴正煕大統領時代の1976年以降からである。従って国語純化運動は20年以上もの歴史を持っており、今も着々と進められているのである。

 この運動の目的、すなわち「国語純化」の定義であるが、「自国語から適当と思われない言葉をなくし、純粋性を回復すること」とされている。具体的には、「汚い言葉と思われる外来語や外国語をできるだけ自国の固有語に再整理し、低俗な言葉や誤った言葉を美しい言葉と標準語に正そうとすること、そして複雑で難しい漢字語をやさしい言葉に直すこと」とされている。

 この運動の所管は文化観光部(日本の文部省に相当)に置かれ、政府・各界よりメンバー構成された「国語純化運動協議会」により、汎国民的な運動となるよう推進され、その活動は現在においても様々な方面で幅広く展開されている。




ボタン待ち時間なし

(1)公共機関等

 国語純化運動を所管している文化観光部は「われわれの言葉、われわれの文字を正しく使う」事業を推進している。文化観光部の傘下機関である国立国語研究院では、運動を推進するための国語研究が地道に続けられており、その成果を毎年「国語純化資料集」などの発刊を通して発表している。さらに有識者の団体である国語純化推進会では、国語純化に対する研究発表や当面の問題を論議し、「国語純化の道」と題した冊子を発刊している。

 鉄道庁では、韓国鉄道100周年記念鉄道庁用語改善事業に取り組んでいる。鉄道用語には日本統治時代からわかりにくい言葉が多く残っているため、乗客がわかりやすい言葉に換えるねらいがある。例えば「スンガジャン(乗降場)」は「タヌン コッ(乗る所)」「チョンド ヨク(前途駅)」は「タウム ヨク(次の駅)」というように、難しい漢字語からやさしい固有語に換えている。

 韓国の中央銀行にあたる韓国銀行は、難しい経済用語、例えば「カムジャ(減資)」を「チャボンクン カムソ(資本金減少)」、語そのものの意味は不明だが、習慣的に使われている語、例えば「クジョワ(口座)」を「ケジョワ(計座)」に換えるなど、普通の人にも納得しやすい語に換えている。

 その他さまざまな公共機関・施設でこうした従来からの使用言語の見直しが行われている。

(2)学校教育現場

 教育部(日本の文部省に相当)では、小・中・高校で「正しい言葉、美しい言葉を使う」運動を教科書に取り入れて推進させている。例えば「チュリップ オムグン(出入り厳禁)」を「トゥロオジ モッタム(出入りできず)」というように、漢字語表記を固有語のやさしい言い回しに換えたり、不自然な言葉と思われる「タマンハダ(多忙である)」や「トゥッカダ(得る)」をそれぞれ「パップダ(いそがしい)」と「オッタ(もらう)」に直したりしている。

 大学では国語国文学科を中心に国語運動学生会を組織し、固有語を活かし新語を作る運動や学術発表会、資料集発刊などの活動を行っている。

(3)マスコミ

 放送業界では、韓国放送倫理委員会が放送用語や運動競技用語の純化に対し、直接的な作業を行っている。さらに韓国の公共放送であるKBS(韓国放送公社)は韓国語研究会をつくり、番組「正しい言葉、美しい言葉」を放送、MBC(文化放送)もアナウンサー室が中心となり同様の番組を制作・放送している。

 新聞業界では、韓国新聞編集人協会が報道用語の統一作業を通して純化運動を行っており、また各新聞社の取組みとして、東亜日報、韓国日報といった大手新聞社などは「正しい言葉、美しい言葉」というコラムを設けて国語純化運動に取り組んでいる。




ボタン国民総背番号と民願

 これからの運動の行方であるが、ポイントとしていくつか挙げられる。

 まずは新語作成や既存固有語の収集維持である。国語学者や言語学者が集まり、造語法を開発したり、方言の収集を行ったりする活動である。

 次に広報および啓蒙活動が挙げられる。マスコミ媒体を利用して普及に努める活動である。

 そして一番重要と思われる三番目として、自民族・自国を愛するという精神的な姿勢の必要性を訴えていくことである。冒頭に述べたとおり、韓国の人々は自分たちの民族性、固有文化を誇りに思い大事にしている国民であることには間違いないが、その一方で伝統的な倫理観である儒教精神が最近急速に薄れてきていることに代表されるように、韓国の固有習慣・文化に対するこだわりというものが薄れてきているのも事実である。こうした時代においてはこの運動の基盤を成す「自民族・自国に対する誇り」を堅持すべく国民に訴えていくことが急務の課題といえる。




ボタン日本への波及効果

 今回あまり触れなかったが、韓国において国語純化運動の一方で、漢字語の有益性を訴え、漢字語の使用を推進する運動があることを付け加えておかなければならない。実際、公共施設では漢字語併記が増え始め、法律条文中でも漢字語併記が認められるようになるなど、漢字語の便利さを見直す動きも現れてきているのである。

 われわれ日本人は古来より外国からの情報を適宣に消化・利用することで自国の文化を作り上げてきた。従来の文化にあまり固執せず、柔軟な姿勢で世の中の流れに乗りながら発展してきたともいえる。今回紹介した韓国での運動は、そういう意味では日本の逆を行っているようにも見え、いささか違和感を抱く人もいるかもしれない。しかし運動の根底にある「自民族・自国に対する誇り」という概念は、日本人がややもとすると忘れがちになる、人間にとって非常に大切なものではないだろうか。こうした運動が国民レベルで行われている韓国という国をうらやましく思えてくるのは私だけであろうか。

純化用語用の例
(日本語がそのまま使われているものの中から)
純化対象用語純化した用語
カラオケノレバン(歌部屋)
ノリマキ(海苔巻)キムパプ(海苔飯)
テンプラ(天麩羅)トゥイギム(揚げ物)
マンタン(満タン)カドゥック(いっぱい)
セビロ(背広)シンサボク(紳士服)
スシ(寿司)チョバップ(酢飯)
ツメキリ(爪切り)ソントップカッキ(爪切り)
文化体育部1995年発行「日本語式生活用語純化集」より抜粋

ソウル事務所所長補佐
金尾 幸夫

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