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「みんなと一緒」、明花さん初登校に笑顔

友のスカート借り

車いす操作、階段昇降・・・学校側、準備重ね

 「中学でまた、みんなと一緒に勉強できてうれしい」。3日、奈良県下市町立下市中へ初めて登校した谷口明花さん(12)は、あこがれの制服を着て、車いすで校内を巡った。待ちに待ったこの日。小学校時代の同級生と顔を合わせると、満面の笑みを浮かべて、再会を喜び合った。

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母、美保さんに背負われて笑顔で自宅を出る谷口明花さん(3日午前7時53分、奈良県下市町で)=枡田直也撮影

 「遠足の前のようで、緊張して、なかなか眠れなかった」という明花さんは、午前6時に起床。セーラー服に身を包み、母美保さん(45)に背負われて自宅を出た。スカートだけはこの日に間に合わず、同級生が冬用を貸してくれた。

 全校集会では、本田好市郎校長が明花さんを紹介し、「一緒に勉強できるようになりました。体にハンデがある明花さんはリハビリや勉強に頑張っています。一人ひとりどんな支援ができるか、考えてください」と呼びかけた。傍らで明花さんは、先輩や同級生たちの顔を見つめていたという。

 「一人でいると、寂しい時もあった」

 明花さんは、町に下市中への進学を拒まれてからの3か月を振り返る。籍を置く県立養護学校から派遣された女性講師と、自宅でマンツーマンの勉強。小学校時代とは異なる環境に戸惑った。家族と出かける以外は、外に出る機会はほとんどなくなり、「みんなと授業を受けたい」という思いばかりが募った。

 6月2日、入学を求めて提訴した奈良地裁の裁判官らが下市中を視察した際、明花さんも同行。階段の多さなどについて質問を受けると、「大丈夫と思います」とはっきり答えていた。

 地裁決定があった同26日には早速、呉服店で制服の採寸をした。鏡に映るセーラー服姿に、美保さんに向かって、「なんか、お姉さんになったみたい」とはにかみ、「友達をいっぱい作りたい」と話した。

 下市中では決定の後、受け入れ準備を進めてきた。全教職員が、明花さんを想定した約30キロの砂袋を持って階段を上り下りし、段差のある廊下で車いすを押す練習をしたという。3か月遅れている学力補充は、夏休みに予定している。

 町も受け入れには前向きだが、地裁決定は不服として、即時抗告した。大阪高裁では従来の町の考え方を改めて示し、判断を仰ぎたいという。財政難で学校のバリアフリー化は困難なことや、中学校は学科ごとに教室を移動する授業が多いことなどを主張する考えだ。

 学校教育法では、障害を持つ児童・生徒は原則、盲・ろう・養護学校に通わなければならなかったが、2002年の政令改正で、受け入れ体制の整う小中学校への就学を認める「認定就学制度」を規定、03年から利用できるようになった。文部科学省によると、認定就学者数は、03年は小学生が957人、中学生が323人だったが、08年5月1日現在では小学生が1899人、中学生で662人に増えた。

2009年7月3日  読売新聞)

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