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児童ポルノ「単純所持」禁止、進まぬ議論 国の信用にかかわる

7月1日10時9分配信 産経新聞

児童ポルノ「単純所持」禁止、進まぬ議論 国の信用にかかわる
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衆院法務委員会の「児童買春・児童ポルノ禁止法」改正案の審議で参考人として意見を述べるするアグネス・チャンさん=6月26日(酒巻俊介撮影)(写真:産経新聞)
 「国際的な潮流があり、禁止しないとわが国の信用にかかわる」「ポルノの単純所持にこだわりすぎだ」…。「児童ポルノ」をめぐり、国会で激しい応酬が繰り広げられている。衆院法務委員会で6月26日、児童買春・児童ポルノ禁止法改正案が審議入りした。だが、意見の食い違いが目立ち議論は一向に進まない。

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 児童ポルノ画像を「持っていること」を罰する「単純所持」についての議論になると、そこで止まってしまうのだ。

 日本ユニセフ協会によると、「単純所持」を禁じていないのは、主要8カ国(G8)で日本とロシアだけだ。与党は昨年6月、単純所持を禁止した上で、「性的好奇心を満たす目的」の所持には罰則を科す改正案を衆院に提出した。対する民主党は単純所持の禁止は「画像を一方的に送りつけられただけで犯罪となる恐れがある」と批判。繰り返しの取得を禁じる「取得罪」を柱とする改正案を今年3月に提出した。

 先の衆院審議。民主党の枝野幸男議員が「(何者かが)野党議員に(児童ポルノ画像を)送りつけ、逮捕されることもありうる」と“陰謀”に使われる可能性を口にして与党案を批判すれば、自民党の葉梨康弘議員は「(民主党案は)反復しての所持を禁じるが、一度に大量のポルノを入手した場合はどうなるのか。単純所持の禁止は国際的な課題だ」とすぐさま反論した。ようやく始まった審議に落としどころは見えず、会期中に改正できるかは微妙な情勢だ。

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 そもそも現行法は「児童ポルノとはなにか」の線引きがあいまいだ。

 児童ポルノ禁止法は定義として、(1)性交の撮影(2)他人が児童の性器を触る行為や、児童が他人の性器を触る行為の撮影(3)衣服の全部または一部を着けない児童の姿態で性欲を興奮させるものの撮影−の3つを挙げている。

 (3)がいつも問題となると解説するのは、性表現に詳しい甲南大学法科大学院の園田寿教授(刑法)。「どの程度の表現で性的に興奮するかは人さまざま。一番大事なそのあたりの議論を深めないといけないが、話題は『単純所持』に終始している」と話す。

 法改正への道のりは険しさを増す中、被害児童数は右肩上がりだ。警察庁によると、昨年の児童ポルノ事件の被害児童数は351人で、統計が始まった平成11年の約3倍。「実際の被害児童はもっと多いだろう。法改正である程度の線引きができた方が捜査はやりやすくなる」と、児童ポルノの捜査経験が豊富な警視庁捜査員は国会審議を注視する。

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 法改正とは別に、本格的な対策も始まってはいる。警察庁は6月、画像に写る着衣や風景を分析して、被害児童を特定する「画像分析班」を設置した。解析した情報は、各県警に提供し、ネットに“漂流”する児童ポルノから犯人検挙につなげたい考えだ。

 民間レベルでも児童ポルノが掲載されているサイトへの接続を遮断する「ブロッキング技術」を研究する協議会が立ち上がった。

 だが、そんな動きをあざ笑うかのような事件は起きる。2歳の娘の児童ポルノを製造したとして、宮城県警は6月9日、児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)などの疑いで、母親(23)を逮捕した。デジタルカメラで娘の裸の写真を11枚撮影した疑いだ。

 写真は大阪府堺市、無職、岩崎瑞穂容疑者(20)=同法違反で逮捕=に郵送し、約10万円を受け取っていた。母親は、岩崎容疑者が要求した「ひわいなポーズ」を娘にとらせるなど、ポルノ性の高い写真を撮っていた。若い母親が性犯罪の“加害者”となった姿。「まさに世も末だ」と県警捜査員は嘆く。

 最大の問題は児童ポルノが「商売」や「小遣い稼ぎ」として成立することだ。法改正の行方は分からない。だが、児童ポルノの「うまみ」を吸おうとする連中が絶えない以上、警察による摘発は続く。

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最終更新:7月1日14時4分

産経新聞

 

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