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’09迫る:知事選 現場を歩く/4 三木・小野の市民病院統合 /兵庫

 ◇地域医療守る指導力を

 山陽自動車道・三木小野インター北約2キロの森に13年秋、大規模な公立病院が誕生する。三木市民病院と小野市民病院を統合した北播磨総合医療センター(仮称)。「市運をかけた」北播磨の総合拠点病院となる。

 だが先月、三木市民病院の08年度決算が、自治体財政健全化法に基づく経営健全化団体への転落が明らかになった。三木市が一般会計からの長期貸し付けをいったん止めたためで、薮本吉秀市長は「経営改善に取り組むチャンス」。しかし、薮本耕一事務部長(52)は議会答弁で「現状が続けば統合までの経営維持は困難」と現状を吐露した。

 県内は10の2次医療圏域に分けられているが医師数の格差は顕著だ。北播磨医療圏域は06年末、10万人当たりの医師数が165・5人と全県平均(213・8人)より約50人少ない。三木市民病院でも神戸大の派遣減などで、ピーク時(04年3月)に52人いた医師は36人に。産科は休止され、脳外科など5診療科で入院診療が中止に追い込まれた。診療規模が縮小し、患者が減って、収入も減少する悪循環。市は02年から毎年、一般会計から約7億~10億円を支援してきたが、08年度の単年度赤字額は約9億5000万円に膨らんだ。

  ◇

 危機は三木市にとどまらない。県内24の公立病院会計で、07年度決算で黒字だったのは加古川市のみ。高砂市と香美町は公立病院資金不足を補う地方債「公立病院特例債」発行を余儀なくされるなど青息吐息だ。

 医師不足と地方病院の危機は、但馬や丹波でも進行。阪神間でも塚口・尼崎の両県立病院の統合計画が県新行革プランに盛り込まれた。県立病院事業は07年度で45億円の赤字。経営体質改善で16年度の黒字化を目指すとして県は昨年度、総務省ガイドラインに沿ってほぼすべての医療圏域で「地域医療確保対策圏域会議」を開催。2次医療圏域で総合的に医療提供する「公立病院のネットワーク化」を発表した。限られた医療資源を効率的に活用する方策だが、地元からは強い反発もある。

  ◇

 全国的に注目を集める三木・小野の病院統合。だが、県は関与に当初から消極的だ。昨年12月、両市は診療科や規模など病院の中身を話し合う「建設協議会」に、“行司役”として県から部長級職員の派遣を要求。だが、県の回答は、正式委員ではなくオブザーバー参加だった。

 県医務課の毛利好孝課長(46)は「両市のお見合いがうまく行っている中、県が積極関与する必要はない」と話す。薮本市長と蓬莱務・小野市長は「医療は単独の自治体で成立しない。県が本来果たすべき役割を果たしていない」と批判する。三木市民病院に通院する男性(84)は「病院が遠くなると経済・身体の両面で負担が大きい」と、統合そのものに不安を抱く。地方の安全安心の基盤である医療体制を守るために、いかにリーダーシップを発揮するか。県政に問われた大きな課題だ。【大久保昂】=つづく

〔神戸版〕

毎日新聞 2009年7月2日 地方版

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