教職員による不祥事が後を絶たない。懲戒処分は常態化し、今年度の処分件数はすでに6件。98年度以降で最悪だった06年度の25件を上回るペースだ。中でも児童・生徒へのわいせつ行為やセクハラで、昨年度は2人、今年度もすでに1人が免職になった。教職員の実名公表は一定の抑止効果があるとされるが、わいせつ事案の場合、被害にあった教え子側のプライバシー保護を理由に匿名で発表されることがほとんどだ。その背景は--。【福田智沙】
5月8日に懲戒免職処分を受けた高校の男性教諭の場合、生徒への盗撮行為が理由だった。県教委は「被害者が特定され、2次被害が懸念される」「被害者のプライバシー保護」「被害者が公表を望んでいない」などの理由を挙げて教諭を匿名とし、年齢も「40代」。高校がある地域は明らかにしなかった。会見では県教委と報道陣が押し問答になったが、結局「どの地域の教諭か」など、被害者が特定できない範囲の情報も公開されなかった。
県教委が06年に定めた処分指針は、免職の場合は実名公表が原則だ。わいせつ行為や公金詐取、飲酒運転などが該当する。ただし、わいせつ事案の被害者が公表しないよう求めている場合、一部を公表しないとしている。
一方、昨年度の2件では、教諭の実年齢は明らかにされた。指針に基づくと、同じわいせつ行為による処分でも公表内容は県教委の裁量次第、ということになる。
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実名公表には社会的制裁が伴う。県教委は「懲戒免職なら退職金も出ないし、免許をはく奪されて教員生命を絶たれる。非公表でも十分な制裁になりうる」との立場だ。
被害者保護の観点からも、教諭の氏名を非公表にするのは全国的な流れだ。ただ、文部科学省は「結果的に教員のプライバシー保護になっている面は否めない」と認める。
「スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク」(大阪府守口市)の亀井明子代表は「非公表の背景には、閉鎖的な教育現場が身内を守りたいとの意思が働いている」と批判する。その上で「氏名は公表すべきだ。公表しなくても2次被害は起きているのが実情で、結果的に加害者擁護になっている」と話す。
教える側と教えられる側、大人と子供という力関係が働いて、問題はそもそも表面化しづらい。亀井代表は「子供は先生は正しいと思い、嫌でも従って泣き寝入りしてしまう」と指摘。「教師への教育はもちろん、子供にもセクハラがどういうものか認識させ、予防教育をすべきだ」と話している。
毎日新聞 2009年6月29日 地方版