銚子市立総合病院休止問題で、岡野俊昭前市長のもと再開後の運営の担い手を探してきた「市立病院指定管理者選定委員会」(委員長・伊藤恒敏東北大大学院教授)は、公募で名乗りを上げた医療法人1団体を「不適切」と結論し、役割を終えた。伊藤委員長は会見で、昨年来のリコール運動を「一部の市民の不見識かつ無責任な行動」と批判。休止問題を巡る対立の根深さを浮き彫りにした。
管理者に名乗りを上げていた千葉市の医療法人「郁栄会」について、選定委は「医師や看護師の確保が不十分で、再開に向けた具体的な計画がない」などの理由で不適切とする結論を26日、市側に伝達。伊藤委員長は辞任の意向をも伝えた。
これで前市長の再開構想は白紙に戻り、野平匡邦市長のもと、自治医科大とのつながりの深い「地域医療振興協会」に再開の望みを託すことになる。
市側に結論を伝えた直後に会見した伊藤委員長は、リコール運動について「医療事情を知らないとしか思えない『公設公営』がスローガンだった」「選定作業を妨害された。(再開困難になるという)相当な代償を覚悟しなければならず、巻き添えを食う市民は誠に気の毒だ」などとうっ憤を爆発。野平市長についても「選定委の意義が消滅してしまったかのような言動は民主主義の手続きを無視し礼節を欠く」とこきおろした。
だが、選定委の手法を巡っては「前市長寄り」との批判がこれまであった。26日の伊藤委員長の発言も「捨てぜりふ」との受け止めが広がっているが、前市長とリコール派の対立の深さを図らずも浮き彫りにした格好だ。
市は週明けにも「市地域医療体制整備推進本部」を開き、今後の取り組みについて協議する。【新沼章】
毎日新聞 2009年6月29日 地方版