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体罰で中学教諭に罰金刑、福岡市教委把握せず

 福岡市城南区の市立中で昨年6月、男性教諭(45)が男子生徒の顔を平手で十数回殴り鼓膜を破るけがを負わせたとして、福岡簡裁から傷害罪で罰金20万円の略式命令を受けていたことがわかった。教諭は昨年11月、この体罰で減給の懲戒処分を受け、生徒側は福岡県警に被害届を提出していた。

 教諭から罰金刑を受けたことを聞いた現在の勤務先の校長は市教委に報告しておらず、市教委は読売新聞の指摘を受けて初めて刑事処分が出ていることを把握したという。

 市教委などによると、教諭は城南区内の中学校に勤務していた昨年6月、当時2年生の男子生徒が体育館の壁をけり壊したとして顔を十数発殴った。生徒は左耳の鼓膜を破るけがを負ったうえ、むち打ち症と診断された。教諭は、男子生徒が所属するクラブ活動の顧問だった。

 教諭は昨年11月、市教委から減給10分の1(1か月)の懲戒処分を受け、今年4月、別の中学校に異動した。市教委の事情聴取に対して「生徒が『クラブ活動の練習中に誤って壁をけった』とうそをついたため腹が立った」と説明していたという。

 市教委は、懲戒処分後に被害届が出されたことを把握していた。しかし、「刑事処分によって懲戒処分が変更になることはない」と判断。刑事処分が出た場合の報告を学校側に求めていなかったという。略式命令は今月3日付で出された。

 市教委の職員懲戒処分指針では、体罰で生徒を負傷させた場合、免職や停職、減給、戒告処分にすると規定。処分内容を決める際には、動機や故意・過失の度合いのほか、司法判断などを総合的に考慮するよう定めている。

 木下和彦・市教委教職員2課長は「指摘を受け、詳しい内容の報告を学校側に求めている」と説明。処分については「罰金刑を受けた体罰の事実関係と、市教委が処分する際に認定した事実に相違はなく、今後変更することはない」としている。

 「体罰で刑事処分に発展するケースは全国的にも珍しい」と小林剛・武庫川女子大名誉教授(臨床教育学)。「こうした事態を招かないため、学校側は誠意を尽くして保護者が納得できるよう十分に話し合うべきだったのではないか」と指摘する。

 馬場健一・神戸大教授(法社会学)は「監督責任のある市教委は、懲戒処分に変更があるかないかにかかわらず、きちんと事態を把握すべきだ」と述べ、「学校での体罰が刑事責任を問われたことを真摯(しんし)に受け止め、再発防止策を講じないといけない」と話している。

2009年6月19日  読売新聞)
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