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イラン:革命防衛隊が台頭 警察・軍事色一層強まる可能性

 【テヘラン春日孝之】イランのイスラム体制は、大統領選後の改革派による抗議行動で革命(79年)以来最大の混乱に見舞われた事態を受け、治安維持を一層強化するとみられる。「内外の脅威」に対応する革命防衛隊の存在感も飛躍的に高まっており、イランが警察・軍事国家の色彩を強める可能性がある。

 高位聖職者アフマド・ハタミ師は26日、金曜礼拝での演説で「社会の平穏を乱し、公共の財産を破壊すれば、神への戦いであり、死刑に値する」と述べ、改革派ムサビ元首相らに警告した。

 情報省や内務省、革命防衛隊の情報機関は改革派のジャーナリストや学者などの摘発を続けており、今後も混乱の未然防止を目的に監視体制強化を図ることは必至だ。逮捕された評論家レイラズ氏はかつて、毎日新聞の取材に「治安機関や革命防衛隊が新たな特権階級として台頭している」と指摘していた。

 特に革命防衛隊は、兵力では正規軍の40万に比べ12万人余と劣るが、傘下に数百万の動員力がある民兵組織バシジを抱え、精鋭の特殊部隊を擁して対外工作や核開発、ミサイル戦略を担うとされる。

 レイラズ氏によると、活動は軍事面にとどまらず、革命防衛隊出身のアフマディネジャド大統領就任(05年)を機に、経済や政治の分野でも一気に主役に躍り出た。経済分野への進出は、イラン・イラク戦争(80~88年)直後、戦争の現場で培った土木工学技術を国土再建に生かそうと始めた。現政権下で「入札なしの契約」という特別な配慮を受け、石油・天然ガスの開発や空港・地下鉄建設といった公共事業などに根を広げてきた。

 政界進出に関しても、現政権は閣僚や大使、知事などの要職に革命防衛隊出身者やその関係者を抜てきした。閣僚では今回の選挙を仕切った内相をはじめ、21人中14人が該当者とも言われる。

 政界進出は、改革派のハタミ大統領時代の99年、民主化を求める学生運動が契機だと指摘される。革命防衛隊は今回、抗議運動に再三、警告しており、軍事力を背景に政界への影響力を一層拡大させることは確実だ。

 最高指導者ハメネイ師を頂点とする聖職者体制は、その基盤強化を目指し、革命防衛隊を育て、同時に依存を強めたことで、逆にその意向を無視できなくなった面もある。

 革命防衛隊の創設者の一人で、今は米国に居住し反体制活動を続けるサゼガラ氏は、聖職者支配の行方を左右する「巨獣」に変容したと指摘する。

毎日新聞 2009年6月28日 21時00分

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