外国人登録制度に代わる「在留カード」による新たな在留管理制度を盛り込んだ入管法改正案が与野党3党による修正を経て衆院を通過、参院に送られた。改正案は不法滞在のあぶり出しを強める一方、外国人の利便性を向上させる「アメとムチ」の内容となっているが、支援団体などは「外国人監視を強める法律だ」と反発する。
外国人登録者数は90年に初めて100万人を突破し、07年には215万人に増加した。現行の在留管理では適正な把握が困難で、行政サービスも提供しにくくなるとの考えから、改正が提案された。
新制度は、90日以上日本に滞在する外国人に、入管が在留カードを発行。入管は市町村から居住地の情報提供を受け、留学先や雇用主からも報告を受ける。実態が情報と異なれば、不法と判別できる。従来は在留資格がなくても市町村の窓口で外国人登録証が発行されたが、改正後は不法滞在者に在留カードは発行されず、身分が証明できない。一方で利便性向上のため、在留期間の上限を3年から5年に延ばし、再入国許可も緩和する。
新制度について、自由人権協会の旗手明理事は5月23日の東京都内の集会で情報の一元管理を「情報を分析し危険な外国人を浮かび上がらせるシステム。不法残留の外国人は生きていく最低限の行政サービスも受けられない」と述べた。
また「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平事務局長は5月8日の衆院法務委員会に参考人として出席し「適正な滞在者にも非常に厳しい罰則規定がある。非正規滞在の人たちも、働いて税金も払っている」と強調した。
こうした声を受け、修正案の付帯決議で、在留資格取り消しの弾力的運用などが盛り込まれた。また、在日韓国・朝鮮人などの特別永住者に交付する「特別永住者証明書」についても、与野党の修正で常時携帯義務は削除された。【石川淳一】
毎日新聞 2009年6月27日 東京夕刊