和歌山

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安心医療を求めて:連携のゆくえ/4 地域医療 /和歌山

 ◇大学が町立病院に研究所--若手医師を引き寄せる

 現役時代の阪神タイガース・真弓明信監督(55)はじめ、プロ野球選手がリハビリテーションで度々訪れた那智勝浦町立温泉病院。山々に囲まれ、眼下に太平洋が広がる。地域医療を45年にわたり支える総合病院。だが大阪府や和歌山市から遠く、近年医師不足に悩まされてきた。06年6月、常勤の整形外科医3人が一度に退職し手術停止。患者も減少し存続が危ぶまれた。

 しかし今、「リハビリ患者は倍増した」と病院は言う。入院・外来合わせて1日約100人。4階のリハビリ室では、08年12月に脳出血で倒れ、左手足にまひが残った古座川町の新屋とみ代さん(60)が、歩行訓練に取り組んでいた。医師が毎日診察し、理学療法士や作業療法士、実習生計15人も付き添う。新屋さんは「丁寧な指導で、自分の足で歩けるようになりました」。

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 新人医師(研修医)が2年間の研修先を自由に選べる新臨床研修制度が、04年度導入された。医局の医師不足が深刻となった各大学は派遣医を引き揚げ、温泉病院でも02年度末に16人だった常勤医は、06年6月には6人に。うち4人は60歳以上だが、当直も月4回前後あった。

 地域医療崩壊の危機に対し、県立医大(和歌山市)は08年4月、温泉効果やリハビリを研究する「スポーツ・温泉医学研究所」を、温泉病院内に開設する。同大の整形外科医とリハビリの若手医師計4人を常勤で配置し、リハビリ科の田島文博教授(51)が所長に就任。田島所長が医大教授を務めながら現地で外来診療もこなして医療サービスの充実を図る一方、先端の研究をすることで若い医師にとっての魅力をつくって人材確保も図った。大学と地域の連携が功を奏した。

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 今も常勤の医師、看護師は必ずしも十分ではない。しかし待井隆志名誉院長(65)は、「地域医療に対する県立医大の理解と情熱のおかげ」。存続の危機に直面しながら昨年3月まで6年間にわたり院長を務めた老医師には、安堵(あんど)の表情が浮かんでいた。=つづく

毎日新聞 2009年6月27日 地方版

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