文部科学省は24日、さまざまな細胞に分化できる人工多能性幹細胞(iPS細胞)の実用化に向け、今後10年程度の研究ロードマップ(行程表)を公表した。難病治療への応用が期待される再生医療では、最も研究が進む網膜の細胞の臨床研究を5年以内に始めるとしている。
国内の医師や生命科学分野の研究者ら計約30人から今後の方向性や見通しを聞き作成した。行程表では、多能性獲得の仕組み解明などの基礎研究▽iPS細胞の品質や安全性の評価法の開発▽さまざまな病気の患者から作ったiPS細胞バンクの設立--について目標を明記。また、組織や細胞ごとに、動物実験やヒトでの臨床研究の開始時期の目安を提示した。
それによると、心筋が5~7年後程度、脊椎(せきつい)損傷やパーキンソン病の治療につながる中枢神経は7年後以降に臨床研究を始めるとしている。また、筋ジストロフィーの治療に役立つ骨格筋は10年後以降と推定。糖尿病や肝不全の治療につながる肝臓や膵臓(すいぞう)の細胞の再生も、分化が難しいとして10年後以降と掲げた。ただ、安全性の評価などが必要なため、文科省は「治療が一般化するには、さらに時間がかかる」としている。
iPS細胞は山中伸弥・京都大教授が開発した。文科省は08、09年度の2年間で関連分野に計190億円の予算を投じた。【西川拓】
毎日新聞 2009年6月24日 21時52分(最終更新 6月24日 23時10分)