韓国初の「尊厳死」のはずが、意外な展開に(上)
人工呼吸器を取り外すも、浅い自発呼吸続く
米国の女性患者、人工呼吸器を取り外した後10年生存
16カ月にわたって生命を維持してきた人工呼吸器を取り外した。だが、キムさん(77)の呼吸は止まらなかった。非常に弱いながらも、自ら呼吸をし、生命の糸を紡いでいた。見守っていた医師たちの間には軽いざわめきが起きた。
23日午前、延世大附属セブランス病院。大法院(日本の最高裁判所に相当)が韓国で初めて「尊厳死」を認める判決を下したのを受け、この日、植物状態に陥っているキムさんに対する延命治療を中止した。ところが、人工呼吸器を外せばすぐに息を引き取るという当初の予想は外れた。病院側や家族はこの日、キムさんの死因を調べるため、解剖を依頼する予定だった。
だがキムさんは、15時間30分が過ぎた24日午前1時30分現在、浅い呼吸を維持しており、血圧や脈拍も正常値を保っている。
生死の境をさまよっているキムさんの生き抜くための戦いが、果たしていつまで続くかは誰も分からない。この記事が紙面に掲載され読者に読まれる24日朝の時点で、すでに亡くなっているかもしれない。だが、77歳の老いて弱った小さな体は、たとえ無意識の中であっても、生命の糸を断ち切ろうとせず、生命の鼓動を続けていた。
キムさんの様子を見守っていた延世大医療院の朴昌一(パク・チャンイル)院長は「人間の生命というものは、そう軽々しく論ずることのできないものだ」と述べた。生命とはどれだけ驚異的なものなのだろうか。多くの人たちがあまりにも簡単に生命を捨てるこの時代に、キムさんは最後まで生き永らえようと、本能的な戦いを続けている。
病院側が延命治療を中止する決定を下したのを受け、キムさんが集中治療室から一般病棟へ移されたのは、この日朝8時54分のことだった。家族や医師団、尊厳死を認める1審判決を下した裁判官などが見守る中、臨終の祈りが始まった。
「お母さん、もう苦しまないで…。天国でお父さんにも会って…」。家族がむせび泣く中、午前10時21分、主治医のパク・ムソク教授が、キムさんの口と鼻に取り付けられていた人工呼吸器のホースを取り外し、電源を切った。
キムさんの首が横へ動き、両目から涙が溢れ、ポロポロと流れ出した。あたかも「悲しみの涙」を流しているかのように見えた。その後、キムさんはやや不規則な呼吸を続けていたが、しばらくして呼吸は安定し始めた。人工呼吸器による呼吸よりは浅いが、1分間に約18回という正常な呼吸だった。
- 23日午前、延世大附属セブランス病院で、娘婿のシム・チソンさん(写真左端)らが見守る中、医師団がキムさん(77)の人工呼吸器を取り外した。だが、キムさんの「本能」はこれに抵抗するかのように、生き抜くための戦いを始めた。/写真=チョン・ギビョン記者
金哲中(キム・チョルジュン)記者(医学専門)
チョ・ベッコン記者
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