和歌山

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安心医療を求めて:連携のゆくえ/1 産科閉鎖 /和歌山

 ◇医大集中避け、分業体制模索 分娩施設、10年で3割減

 明かりの消えた産婦人科病棟。分娩台(ぶんべんだい)や新生児用ベッドがシートで覆われていた。年400人が産声を上げ、赤ちゃんを抱く母親の笑顔であふれてきた面影は、今はない。

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 08年末、和歌山市中心部の民間総合病院が突然産科を閉鎖した。産科医は院長を含め3人。07年秋、1人が転勤する直前、院長に肺がんが見つかる。院長はつてを頼って代わりの医師を探したが、見つからなかった。

 1年もたたない08年8月、院長は63歳で息を引き取る。直前まで診療を続けたという。後に残された50代の医師1人が、体調を崩すまでに時間はかからなかった。半年もたたずに、産科は半世紀にわたる歴史に終止符を打った。

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 県内の分娩施設は25病院・診療所で、10年間で「14」も減った。

 県内で唯一、切迫早産など危険度の高い妊婦に対応する「総合周産期母子医療センター」の県指定を受ける県立医大(和歌山市)。近所の産科が消えた影響や不安からか、06年ごろから正常分娩が予想される妊婦が急増。産科が満床となり、本来の緊急事態の妊婦を断る例も出た。妊娠22週以降の超早産に対応できるのは、県内で県立医大と日赤和歌山医療センター(同)のみ。両病院は容態急変の妊婦を受け入れるため、満床は許されない。

 お産の安心のため、医療関係者は連携を模索した。県立医大や和歌山市保健所が中心となり、海南市、紀美野町の病院や保健所などと「和歌山医療圏における周産期医療ネットワーク協議会」を結成。3市町の分娩予約を一括管理する和歌山周産期情報センターを、08年3月に県立医大へ開設した。3市町の分娩施設10カ所から週2回、センターはベッドの空き状況の連絡を受ける。センターは、県立医大への集中を避けつつ、妊婦と相談して状況に応じ地域の病院・診療所を勧める。

 さらに、「妊婦健診は近所の掛かり付け医」「分娩は総合病院で」という分業を進めるため、分娩先を県立医大、日赤、和歌山労災病院(和歌山市)の中から選べる「セミオープンシステム」を、地域の婦人科25件と連携して立ち上げた。

 08年度、県立医大が妊婦搬送を断ったケースは3件で、07年度の約10分の1に激減した。「どこか一つでも欠けたら厳しい状態だが、安心して出産できる体制を連携で模索したい」。同大産婦人科の南佐和子講師は言う。

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 産科閉鎖、勤務医不足、公立病院赤字……医療が危機にひんしている。連携を通じ安心医療を求める姿を追う。(この連載は加藤明子が担当します)

毎日新聞 2009年6月24日 地方版

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