2009年6月24日11時3分
村上春樹さんの長編「1Q84」(新潮社)の勢いが止まらない。1、2巻あわせて発売2週間足らずで100万部、22日現在では145万部が刷られ、純文学としては前例のない勢いで売れ続けている。関連本や音楽、美術にも効果が波及し、業界は「ムラカミ特需」に沸く。何が読者をそこまで引きつけるのか。
「1Q84」の刷り部数は22日現在、「1」が78万、「2」が67万。紀伊国屋書店の調べでは実売部数も、近年のベストセラーと比べて驚異的な初速だ。
日本で「1Q84」を最も売っている書店の一つ、東京・紀伊国屋書店新宿本店は、5カ所にコーナーを設ける。売り場担当者は「メディアで話題になり、新たな読者が開拓された」と話す。同書店店売推進本部によると、前作「アフターダーク」は男性客が多かったが、「1Q84」は女性客が増え続け、半数を超えた。また、従来のファンより若い30歳前後が多いという。
東京・丸善丸の内本店では入荷したその日に9割が売れる。「ビジネスマンが『これが話題の本か』と言って、すかさず買ってゆく」という。
「村上色で店を埋め尽くすくらいのお祭りにしたい」と話すのは、東京・三省堂書店神保町本店の売り場担当者。発売前から既刊本でフェアを開催。「1Q84」の担当編集者のインタビューなどを収録した冊子を独自に作り配布した。
5月末の発売前から、人気が過熱する下地はあった。
新潮社は今年2月に「村上春樹の最新長編小説 初夏刊行決定」と広告を出したが内容は一切明かさず、読者の飢餓感をあおった。出版取次の最大手・日販の担当者も「小出し情報から一転、発売前の重版や12日目でのミリオン達成が一気に報じられ、買いが買いを呼ぶ展開になった」。