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ファンド回帰の兆し 投資家、高利回りに触手

2009年6月24日3時11分

 【ロンドン=有田哲文】金融危機で「冬の時代」を過ごしていたヘッジファンドや企業買収ファンドが、息を吹き返し始めた。安全資産にがまんできなくなった投資家が資金を動かし始めたことが、背景にあるようだ。

 「投資家の食欲が戻ってきた」。ロンドンのヘッジファンド「サミナキャピタル」で日本株担当のファンドマネジャー、シリア・ファーノン氏はそう感じている。

 3月ごろまでは、いくら回っても「投資するお金がない」と言われたが、4〜5月から変わってきた。日本株がいかに割安かを説明すると、「非常におもしろい」と興味を示す投資家が増えた。「いつから動き出すのか」「どういう会社なのか」との問い合わせも相次ぐ。6月30日に2500万ドル(約24億円)の日本株投資ファンドを立ち上げ、「5年間、最低でも平均10%の利回り」(ファーノン氏)を目指す。

 金融危機で世界の資金は安全資産に向かった。その代表格である米国債の金利は昨年11月に急落し、年末から4月まで10年物で年2〜3%の低い水準が続いてきた。そんなお金がうずき出した。調査会社ユーレカヘッジによると、5月、世界のヘッジファンドへの資金流入が流出を10カ月ぶりに上回った。運用資産額は303億ドル増の1兆3200億ドル(約127兆円)となった。

 ファンドが注目される背景には、大手金融機関への規制強化が影響しているとの見方もある。「投資銀行」と呼ばれたかつての米証券大手も、いまは米連邦準備制度理事会(FRB)の監督下にある。

 香港とロンドンを拠点に、欧州やアジアの破綻(はたん)企業の資産を安く買うファンドを2億〜3億ドルの規模で月内に立ち上げるエム・キャピタル。米証券大手メリルリンチ出身のマーク・デボンシェア最高経営責任者は、年金基金や富裕層向け資産運用機関など約200の投資家と対話してきた。「投資銀行は証券仲介など伝統的な仕事に回帰してきている。そこから資金が向かっているのは明らかだ」

 ファンド新設には、マネジャー側の事情もある。報酬は稼いだ利回りで決まるが、このところの落ち込みが影響して、従来のファンドを続けても報酬につながらない。大手金融機関をやめ、「ゼロからの出発」(金融関係者)を求めるマネジャーの動きはしばらく続きそうだ。

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