将来の巨大ビジネスに群がる? 日本郵政の三井住友支配
鳩山前総務相に「巨悪が潜んでいる臭いがする」と言われるなど、悪いイメージが定着しつつある日本郵政。さらに西川社長の出身母体である三井住友グループとの関係がクローズアップされている。その理由は……?
「巨悪が潜んでいる臭いがする」(鳩山邦夫前総務相)とまで言われ、悪いイメージが定着しつつある日本郵政。ここにきて、西川善文社長の出身母体である三井住友グループとの“ただならぬ関係”がクローズアップされている。身内であるはずの旧三井系の関係者ですら、「これはヤバいんじゃないかと思う」というほどだ。
グループ3社民間出身役員28人中13人
「スゴ腕バンカー」で鳴らした西川氏は、メガバンクの一角、三井住友フィナンシャルグループ(FG)社長や三井住友銀行頭取などを歴任。2006年に日本郵政(当時は民営化準備会社)の社長に就任した。
民営化にあたり、組織を持ち株会社である日本郵政、郵便事業を行う日本郵便、局舎を管理する郵便局会社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命に分割。役員を民間企業から積極起用したが、特に目につくのが三井住友系企業の出身者だ。
日本郵政には、取締役(社外を除く)と執行役を務める民間出身者は計8人いるが、うち5人が三井住友系企業の出身者となっている。
三井住友FG出身の西川氏をはじめ、寺阪元之執行役副社長(郵便局会社の社長を兼務)は元スミセイ損害保険、横山邦男専務執行役は三井住友銀、妹尾良昭常務執行役は旧住友銀と大和証券SMBC、清水弘之執行役(郵便局会社の執行役を兼務)は三井不動産の出身となっている。
傘下のゆうちょ銀をみると、福島純夫執行役副社長が旧住友銀と大和証券SMBC、向井理希常務執行役が住友信託銀、宇野輝常務執行役は旧住友銀と三井住友カード、村島正浩執行役が三井住友銀――と民間出身の役員(社外取締役を除く)11人のうち4人が三井住友系だ。
日本郵便とかんぽ生命にはいないが、郵便局会社には民間出身の9人のうち4人が三井住友系となっている。
「日本郵政にすれば、『有能な人材を適材適所に配置した』ということだろうが、それにしても三井住友色が濃すぎる」(金融アナリスト)というのが、経済界の見立てだ。
日本郵政が行った外部委託や取引でも、なぜか三井住友色が色濃くにじんでいる。
例えば、東京・東池袋の一等地にある施設「旧かんぽヘルスプラザ東京」(07年に営業終了)の土地は信託契約が結ばれたが、信託受益権の7割が住友不動産に50億円で売却された。
さらに、ゆうちょ銀は08年から独自のクレジットカードを発行しているが、事業委託先に選んだのが三井住友カードとJCBの2社だった。ゆうちょ銀の委託先選定の責任者はほかでもない三井住友カード出身の常務執行役、宇野氏だ。
民営化を機に設立された日本郵政の従業員持ち株会は、加入者数が15万4000人、拠出金総額が約160億円という巨大さ。ここで事務代行や株式の買い付けを行っているのが、三井住友銀と大和証券グループ本社の共同出資会社である大和証券SMBCだ。
これが将来、“巨大なビジネス”に化ける可能性を秘めている。
「日本郵政とゆうちょ銀、かんぽ生命は株式の上場を目指しており、証券会社にとっては上場準備や株式の引き受けなどを行う主幹事業務は大きなビジネスチャンス。従業員持ち株会の事務を手掛けることは、“実績”という面で有利な立場にあるといえる」(外資系証券幹部)
ほかにも、日本郵政の8施設をキョウデングループに売却。グループの中核会社、キョウデンの第9位株主(保有比率0.63%)は三井住友銀である。この8施設の取得価格は計340億円以上に上ったが、売却価格は11億円弱というお得ぶりだ。
こうした取引は、三井住友グループの内部でも不安視する向きが多い。旧三井系の関係者は「一連の取引は日本郵政から三井住友グループへの利益誘導と受け取られかねない。これはヤバいんじゃないかと思う」と明かす。
一連の問題を追及している日本共産党の大門実紀史参院議員は「三井住友を含む銀行業界が郵貯やかんぽの資産を食い物にしている構図」と指摘する。
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