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厚労科学研究班
「院内助産」で産科医・助産師の共有GL
6月末までに作成へ
2009.6.19


 産科医と助産師が協働して行う院内助産の取り組みが全国的にも進んでいる。こうした院内助産システムについて厚生労働科学研究班(主任研究者:池ノ上克 宮崎大医学部長・産婦人科学教授)は、産科医と助産師が共有できるガイドライン(GL)を6月末までに作成することが明らかになった。GLは、院内助産を安全で安定的に実施する目的で作成するもので、池ノ上教授は、「院内と院外の助産システムの質的向上を図ることで、日本の産科医療の底上げにつなげていきたい」と話した。

●不安解消には信頼関係の構築重要
 
 池ノ上教授は、「長年にわたり維持されてきた助産師制度が、現在の産科医療の中でこれまで以上に有効に活用され、産科や新生児の担当医と協働しながら、質の高い産科医療を提供する必要が高まってきた」と語り、産科医と助産師が共有できるGLの作成が、産科医療の安全文化を醸成し、質的向上につなげるツールになるとの考えを示した。

 特に、2008年度から厚生労働省は、院内助産所・助産外来開設のための施設整備や助産師等研修事業を開始している。これらの事業を円滑に進める上でも、院内助産をめぐって産科医と助産師が相互に理解し、活用できる共通のGLが必須となっている。

 そこで、病院・診療所の産科医と助産師が医療チームとして協働するためのGLが、分担研究者の中林正雄氏(愛育病院長)を中心に、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会に所属する医師や、日本看護協会、日本助産師会、日本助産学会の助産師も交えて作成された。分担研究者の中林氏は、勤務助産師らが抱える不安の解消策として産科医と助産師相互の信頼関係構築を挙げている。

●「助産所業務ガイドライン」の改訂作業も

 今回の検討では、日産婦が昨年6月に刊行した「産婦人科診療ガイドライン 産科編2008」と、日本助産師会が04年に策定した「助産所業務ガイドライン」を参考にしながら、産科医と助産師が共有できるガイドラインの作成を進めた。

 特に、新ガイドラインでは、助産師が産科医に報告すべき基準を明確化している点が1つのポイントだ。これによって助産師は、個々の力量に依存することなく、ガイドラインを基本に一定の知識・技術水準を確保していくよう努力することになる。

●助産システムの質向上で安全確保

 例えば、GBS、HTLV−1、ヘルペスなどの感染症罹患妊産婦については、早期に医師の管理下とすることなどの基準を明記した。さらに、異常出血や分娩開始後、長時間お産に至らない場合、胎児心拍パターンの異常などの場合には、医師の対応を求める目安としている。その内容も、分娩期、産褥期、新生児期などに分けて、分かりやすく基準を盛り込んでいる。

 さらに、池ノ上教授の研究班では、「助産所業務ガイドライン」の改訂作業についても検討を進めている。同改訂ガイドラインも6月末にまとめられる見通しだ。

●日看協・坂本副会長 院内助産体制に診療報酬で評価を

 院内助産の診療報酬の評価について坂本すが教授(東京医療保健大、日本看護協会副会長)は17日、本紙の取材に対して「医療関係業務の役割分担が重点課題になっている中で、産科医と助産師の協働の動きを診療報酬の側面からも評価する方向を探る時期ではないか」と語った。

 坂本教授は、診療報酬改定結果検証部会で2008年度診療報酬改定での加算等が病院勤務医の負担軽減に十分に寄与していないとの報告について、「極めて残念な結果だった。しかし、入院時医学管理加算のように検証を行う時期によって検討結果が異なる方向に行く可能性をはらんでいることも考慮しないといけないと認識している」と話した。

 その中で、産科医の業務の負担軽減策の有効なツールとして、院内助産の動きが出ている。坂本教授は、「ローリスクの正常分娩は、これまで通り助産師が行うが、ハイリスク分娩については産科医を中心に対応する体制を確保しているというのが院内助産システムだ」とし、「次期診療報酬改定では、院内助産体制を行っている医療機関について、一定の評価を検討してもいいのではないか。施設基準を設定し、それを満たせば評価することが可能だ」とも説明した。


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