来月、「本物」のお釈迦様が奈良に来る。と言っても、奈良国立博物館の特別展で展示される京都・清凉寺の本尊、釈迦如来立像(国宝)の話。釈迦が生きている間にインドで造られた像を模刻したもので、実は模刻像と本物とが入れ替わったという伝説がある。胎内には、絹でできた内臓も納められていた。
私が気になるのは、体中の傷。全国を回って御開帳された時に、民衆が願いを込めて投げたさい銭が当たってできたと聞いて驚いた。文化財として考えるととんでもない話だ。
だが、何とも人間くさい傷跡ではないか。人々の願いを体で受け止め傷だらけになったお釈迦様。私のわがままも、きっと笑って聞いてくれる気がする。(花澤)
毎日新聞 2009年6月23日 地方版