厚生労働省が検討している医療事故の死因究明機関「医療安全調査委員会」が設置された場合、調査委が警察に通知する範囲を「故意に近い悪質な医療行為」などに限定する案を、厚労省研究班(主任研究者=木村哲・東京逓信病院長)がまとめた。不注意や思い込みなどによる通常の過失は、行政処分で扱うとしている。厚労省はこの案を参考にして法制化の検討を進める。
調査委は、医療者が中心になって医療死亡事故の真相解明や再発防止策の提示に当たる組織。厚労省は昨年4月の試案で、調査は警察の捜査に先行し、重大な過失などが判明した場合のみ、刑事責任を問うべき事例として調査委が警察に通知するとの考えを示していた。だが「重大な過失の定義があいまい」との批判もあり、厚労省が研究班に通知範囲の具体化を求めていた。
研究班の中間報告によると、警察に通知するのは(1)故意(2)隠ぺいや偽造(3)同じ医療過誤を繰り返すリピーター医師(4)医の倫理に反する故意に近い悪質な医療行為。(4)の例として▽医学的根拠のない医療▽著しく無謀な医療▽著しい怠慢--を挙げた。悪意のない過失で診断ミスや患者・薬剤の取り違えなどが起きた場合は、行政処分の対象にする。基本的な医学常識の欠如や非常識な不注意による事故などは、さらに検討を続けるとした。
また、医療機関がどの範囲の事故を調査委に届け出るかについては、明らかに誤った医療行為で死亡した「医療過誤死」と、病気の進行や合併症だと医学的に説明ができない「死因不詳」のケースを扱うべきだとする案を示した。【清水健二】
毎日新聞 2009年6月22日 20時01分