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高知 NA_テーマ2 自治体
「地方政治の限界」を理由に知事退く 橋本大二郎氏
2007/08/20

 8月18日、「県民マニフェスト大会」(11月25日予定の高知県知事選挙を意識)に行きました。午後1時から4時半まで今後の高知県政に対してさまざまな提案がなされました。

 まず2時半までは、6人のパネラーによる提案発表でした。提案パネラーは以下の人たちでした。

沢山保太郎さん(東洋町長。原発交付金に頼らないまちづくり実践中)
菅野光公さん(高知大学教授・環境エネルギー学)
山崎秀一さん(高知県職員労働組合中央執行委員長)
西田政雄さん(市民防災活動指導者)
高橋由美さん(行政書士・現代川柳作家)
野本靖さん(筑波大学大学院生・交通工学)

 その後、パネラーの提案に対し、参加者(約80人)の中から意見、質問、提案のある人たち(約10人)がマイクを握りました。
 


東洋町長・沢山保太郎さんは、「市町村広域合併は中止すべきだ」と語った



司会の窪則光さんは、(まとめ)として、橋本県政を厳しく批判した



組合委員長の山崎秀一さんは、「職員とともに行動する知事がほしい」と語った



菅野光公さんは、スライドを示しつつ、原発の「一長五短」について語った



こうした場に若い人は来ないが、この日は高校生2人が参加していた



約80名の人が、投票以上のことをするために足を運んだ



大会の感想

 県民マニフェスト大会は、混乱を予想して、運営が毅然としていました。混線しつつもいろいろな意見が聞けて、成功だったと思います。ああした会場には、若者の姿が皆無なのが普通ですが、前の方に女子高校生2人の姿がありました。希望の光がほの見えました。高2の彼女は沢山さんと握手してとても幸せそうでした。沢山さんが赤くなっていました。高3の彼女は窪さんの配慮で、サイン入りの本を2冊もらい、とても喜んでいました。2人ともとても熱心に話を聞いていました。「おもしろい?」と私が聞くと、「学校ではこんな話聞けないので、とてもおもしろい」とのことでした。

 あの会場内での、沢山さんの人気は高かったです。しかし、人々は、いまだに、彼を「反核町長」としてとらえていました。TPOを考え、昨日は、「オンブズマン町長」としてとらえるべきだったのではないでしょうか。パネラーにも会場にも反核関連の発言が多く、司会者の「まとめ」にもありましたが、反核集会のようになってしまいました。反核は当然のことで、今後の県政の骨組について議論する場だったので、意見が偏りすぎていたと思います。全体の流れを考慮しない意見をいかにコントロールするか、今後の課題だと思います。

 「農林水産業を中心に、高知の特長を生かし、1次産業でいきましょう。そのために、自然環境の保全には力を入れましょう。金はなくとも、災害に強く、豊かに生きていける道をさぐっていきましょう」というような趣旨の意見発表がとても多かったです。これは、大きな成果だと思います。農林水産業に観光をプラスして、周辺の個別の問題を語っていけば、「県民マニフェスト」は形になっていくと思います。

橋本大二郎氏の限界

 さて、私は取材をしますが、時には、取材されることもあります。16年前、大阪から高知に移住してきたばかりのころ、毎日新聞から始めたばかりの自然農園の取材を受けました。その折、記者は、「橋本知事についてどう思いますか」と質問しました。落下傘から降りたって高知県の知事になったばかりの橋本大二郎氏と私はおなじ身の上だったからです。

 私は、当時、兄の橋本龍太郎氏が大蔵大臣であったことから、「国政に野心があって、高知県知事はそのステップにすぎないのじゃないですか。そのうち、高知県民を裏切る形でさっさと出て行くと思いますよ」と答えました。しかし、その記者は、その部分を記事にしませんでした。

 まさかこんなに長く居座るとは予想していなかったのですが、私の予想は16年後の最近になってようやく的中しました。参議院選の結果の出た直後に「地方政治の限界」を理由に、5期目の知事選に出馬しないことを表明、国政への野心を明らかにしたのです。それは、5期目を予想していた県の政財界にとっては、青天の霹靂でした。今、水面下でさまざまな綱引きが始まっていると思われます。

 自己の限界を「地方政治の限界」として、責任回避したのは、詐術です。かつて、彼の連れてきたコンピューター関連の人が逮捕されたとき、彼は「過度の信頼」という言葉で自分の責任を回避しようとしました。そのときと同じ精神構造です。もちろん、この「過度の信頼」は、その後も長く県下の物笑いの種になりました。

 現代日本には、いつのまにか、2世、3世の政治家が巷に溢れるようになりました。政治の世襲は、世の中の風通しを悪くするので、困った現象です。たとえば、「こんなことは、アルツハイマーの人でもわかる」と言った麻生外相、自分は指導者として参院選で選ばれなかったのに、いつまでもその地位にしがみついている安倍首相、人としての資質に欠ける人たちが国政の中枢に居座っています。人生哲学、内省のない人たちが国政を支配しています。

 橋本大二郎氏の場合もそうです。彼もおぼっちゃんです。彼には数々の失政があります。「橋本県政最大の失政になるでしょう」と私は何度も高知新聞で忠告してきました。たとえば、県民の半数が上水道として利用している水源の上に産業廃棄物処理センターを造ろうとしています。高知市中心部の親水空間・新堀川を道路にする工事をやめさせようとしません。16年間のうちには、億単位のお金が何度も使途不明になっています。いったい何が「地方政治の限界」なのでしょうか。

 彼には、判断力が欠けているのですから、国政の場に出ても同じことをしでかすでしょう。その時、彼は、「国政の限界」とうそぶくのでしょうか。政治家というのは、限界をいかに調整、克服し、「最大多数の最大幸福」を実現していくかが腕の見せどころなのではないでしょうか。私は、「地方政治の限界」を理由に知事を退く橋本大二郎氏の国政参入に首をかしげています。

 最近の高知新聞に、橋本知事の人気ブログ「だいちゃんぜよ」が最終回を迎えたとありました。任期満了まであと3ヶ月以上もあるのです。「飛ぶ鳥後を濁さず」という言葉は、彼の辞書にはないのでしょうか。

(小倉文三)

     ◇

参考資料

 ここに東洋町長・沢山保太郎さんの作成した「県民マニフェスト」があります。当日、会場での発言も多く、人々の拍手も多かった人です。ご参考まで、その全文をそのまま掲載します。(筆者)

平成19年高知県民マニフェスト

 橋本県政16年の悲惨な結果の中で、現在における高知県民のマニフェストは次のようなものでなければならない。

最初の高知県民マニフェスト

一、第1回目の高知県民のマニフェストは明治3年板垣退助権大参事が発した「人民平均の理」を闡明した高知藩庁の「諭告」であった。それ以来、高知県には見るべきマニフェストは発せられていない。高知藩庁の最初のマニフェストは、日本最初の人権宣言とも言うべき格調高いものであり、県庁正面に掲示されるべきものであった。

 封建時代には一部の者に権力が集中し、多くの人民はそのらち外に置かれ、卑しめられてきたということ、これを打破して人民の力を全面的に解放する必要があることが主唱されている。近代史上に燦然と輝くこの歴史的宣言は、しかし、後代においてほとんど顧みられることもなく、図書館の資料の中に埋没されてきた。

高知県の惨状

二、高知県においては、今もなお、この最初のマニフェストの剔抉(てっけつ)する事情は基本的に変わっていない。大多数の県民の力は押さえられ、高知県勢はあらゆる政治的・経済的指標が全国最下位にあり、その平均寿命を見ても全国最短のなかにある。政治と行政の不在、否、政治や行政の一部の者による壟断独占が横行し、そのことから近年、様々な重大不祥事が出来(しゅったい)し、県庁自体に司直の捜索を受け副知事ら幹部が縛につくというように末期的な病状を呈している。

必要なマニフェスト

三、現在必要な県民のマニフェストの内容は、

1、浮薄、虚妄の橋本県政から断絶することを宣言し、
2、県財政を総点検しながら、無駄な費用、無駄な事務を抜本的に削減すること
3、財政の総力を挙げて県民の経済的・社会的地位の向上のために尽力すること
4、そのために、今次マニフェストには

 第1に、高知県内の自然的・平和的環境保全のために、

1.核関係施設の拒否(条例の制定)、2.エコエネルギーの開発、3.省エネルギーの徹底、4.有機農業など健康食品の特産化、5.森林の整備、6.河川、海浜の保全等をはかること、7.南海地震等災害対策の強化、8.軍事施設建設の拒否、現憲法の護持等がうたわれる必要である。

 第2に、県庁の抜本的改革は、道州制など上部構造・国家等に行政機関が統合・収斂されるのではなく、従来規模の市町村にその権限と財政や財産が下放拡充されていく方向でなければならず、地方自治の一層の充実が達成されねばならない。

 地方人民の自己決定権の拡充、人民の政治的権能の多角的発展が推進される必要がある。民主的な統治能力のある無数の人士が都市や地方に存在することが、産業基盤を支え、自然環境を保全し、また、一朝ことあるときには国土を防衛する民力の基礎となる。従って現在進められている市町村の広域合併計画は中止するべきである。

 また、県庁組織はだんだんに市町村へ権限や人材を移行すべきであるが、行政機関へのボランティア的参加など県民の広範な参加が必要であり、また県議会以外に、各郡市、地方ごとに県民が直接意見を表明し県政に反映させる県政評議会のような中間的組織も県下に数十個必要である。

 また、県行政を日常的に監視するオンブズマン的組織が中央、地方に設置されねばならず、結果文書の公開のみならず、庁議の公開など行政過程そのものが県民に公開されなければならない。

 第3に、県内の失業者、都市部の空洞化、特に農漁村の疲弊、人口の激減、少子高齢化は座視することのできない状況にあることをかんがみ、抜本的な産業復興政策を講じる必要があり、県庁が市町村と一体となって失業対策本部を設置し、都市部、山間部を問わず全県下にここ十年間毎年億単位の資金を優先的に回す必要がある。

 第4に、教育の改革について 土佐の教育改革の実体は何なのかついに高知県民には理解することができなかった。実体虚妄の空言を掲げても莫大な教育予算の割には成果らしきものは何も見えない。青少年の教育の現状は知育、体育ともに最低レベルを低迷している。大学への進学状況1つをとっても旧態依然として最下位を這っている。優秀な人材を育成し、これを礎にし、高知県を再建する必要がある。

 国庫補助金でも華麗な施設でもない、人が高知県の富と文化をはぐくむのであって、それを達成するには、一流の教育者や思想家を招聘し、文芸復興の策を練る必要がある。質実剛健の人材育成の方針を立て、県全体が向学の風、文芸重視の風潮を醸成し、高知から日本や世界に雄飛する人材を輩出する政策が必要である。



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[29960] 橋本知事の別荘が見たいです
名前:成川順
日時:2007/09/11 13:52
 小倉さん、いつもごくろうさま。


 今日(9/11)から高知新聞では、橋本県政を検証するための連載がスタートしました。16年前は、随分若かったのだな、と就任時の写真に驚かされます。逆に、最近、闇融資事件の県幹部3人に有罪判決が出た日の写真を見たときは、随分老け込んでしまったな、という印象を受けました。あの時、「事件後の選挙で当選したのだから、私には責任はありません」みたいなことをのたまってましたね。(それとこれとはちがうだろ) 副知事以下の3幹部は退職金を押さえられたのに、知事は4期目の退職金を満額持っていくつもりなのでしょうか?


 私の友人の友人に、長野県蓼科の「三井の森」に別荘を持っている人がいるのですが、「高知県民は、知事がこんな豪華な別荘を持っていることをご存知なのだろうか?」と言っているそうです。私も1度その別荘を見てみたい、とは思うのですが、時間がありません。小倉さんに取材してもらえないものでしょうか。


 知事が別荘を持っていてはいけないというわけではありません。問題は、それが、適正なスケールのものかどうかです。知事の給料やボーナス、すでに3期分まではもらっているという退職金、さらにはNHK時代の貯蓄、親からの相続、そういうものを勘案して、適正な買い物であったのかどうか、知りたいです。


 高知県警本部長が、県議会の場で、捜査費疑惑の追及をかわすため、「これ以上県警を追及したら、知事も危なくなりますよ」というようなことを言って、橋本知事をけん制したのは、記事にもなり、記憶に新しいところです。大方の人は、県警本部長の脅迫を憎みましたが、私は、知事に弱みがあるのもおかしい、と考えました。


 高知県警には、「高度な政治的判断」や自分たちのケチな保身のためでなく、もし橋本知事に犯罪行為があったのなら、それを県民の前に明らかにしてほしいものです。それは、県民のための県警の仕事なのですが、・・・。
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