定額給付金:虐待児への支給に格差 自治体対応さまざま 

2009年6月20日 15時0分

 虐待を受けて児童福祉施設などに入所している子供たちへの定額給付金(18歳以下2万円)を巡り、自治体間で格差が生じている。ドメスティックバイオレンス(DV)で別居した女性らと同様の支給を決めた自治体がある一方、支給しない自治体や親子関係に配慮して親を差し置いての支給を見合わせる自治体も。専門家は「虐待を受けた子が不利な扱いを受けるのはおかしい」と指摘する。【馬場直子】

 定額給付金は、住民登録に基づいて世帯主が家族全員分を申請し一括支給されるのが原則。その一方で、DVや虐待で家を出た妻や子供に対し、どう支給するかが課題となっている。DV被害者の女性については、夫への支給差し止めを求める仮処分が申請されたことなどで注目を集め、全国458自治体(市区町村)が同額の独自支給を実施したり検討している。だが、虐待児童に支給する自治体数は総務省も集計していないのが現状だ。

 児童福祉施設の入所児には(1)保護者が死亡か行方不明(2)親と離別して住民票を施設所在地に移動(3)親から所在を隠すため住民票を移動せず--の三つのケースがある。東京都内の四つの施設では入所児計約180人のうち、支給されたのは計10人程度。大半が(1)の子で、(2)のケースについて都は、施設に届いた給付金申請書を保護者に転送するとの方針を示している。都育成支援課は「将来の家族の再構築を考えると、施設と親の関係がこじれるのは避けたい」と、その理由を説明する。

 一方、鳥取県米子市は住民票が市内にあるかどうかにかかわらず、児童虐待防止法に基づく被害児童に対し独自に特別給付金を支給した。津市や愛知県豊田市、尾張旭市、広島県尾道市などは虐待児童に給付金と同額を支給する。

 虐待された子供が自立を目指して生活する自立援助ホームの全国連絡協議会の平井誠敏事務局長は「自治体によって虐待を受けた子の間に格差が生じるのは、自分の責任ではないのにおかしい」と話している。

 ◇「どうして自分もらえないの」

 虐待していた親に居場所を知られないため住民票を移していない子供が半数を占める関西の児童福祉施設では今春、給付金の話題がニュースなどで伝わると「ゲーム買いたいね」との話が子供たちから出た。だが、実際に受給できたのは、住民票を移すなどした半数足らずの子供だけ。園長は「文句は聞きませんから『仕方ない』と思っているんでしょうね。でも、通っている学校で、親と暮らす子が給付金をもらった話を聞いている子もいるでしょう。心中にはいろいろあると思いますよ」と思いやる。

 東京都の施設職員は「受給できなかった子供から『どうして自分たちはもらえないの』と声が上がった」と表情を曇らせる。給付金を巡り親と折衝した九州の施設職員は「まともに養育すらしない親に、なぜ給付金が届けられるのか。加害者にほうびを与えるような印象がある」と憤る。【馬場直子、坂本高志】

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