19日、国会で海賊対処法案が成立しました。この海賊を生み出すアフリカ・ソマリアの実態は、取材が非常に危険であるため、ほとんど明らかになっていません。ソマリア国内の現状は、そして、周辺国に押し寄せる難民たちの悲惨な生活ぶりとは。
ソマリアで内戦が始まったのは18年前。以来、無政府状態が続き、「破たん国家」と呼ばれてきました。
この危険な国にNGOスタッフとして派遣された日本人医師に話を聞くことが出来ました。
「宿舎から病棟までが30メートルもないのですが、その途中ただ歩くだけでも危ないので、出た瞬間に銃を持ったボディーガードが横につきます」(国境なき医師団 黒崎伸子医師)
戦闘が激化した去年4月、黒崎さんは撤退を余儀なくされました。国際NGOの支援も困難となり、ソマリアの人々はいま、国外の難民キャンプに大挙して避難しています。
隣国ケニアのソマリア人難民キャンプの映像です。現在、収容可能人数の3倍にあたる30万人が流入し、国連から「アフリカ最悪のキャンプ」と指摘されています。
「子どもたちが死に、飲み水もないため、ソマリアに戻ろうとする人たちもいます。『のどが渇いてキャンプで死ぬのなら、ソマリアで撃たれて死んだ方がましだ』と・・・」(ダダーブキャンプの難民)
水やテントは大幅に不足し、衛生状態も悪化。それでも難民は毎日200人ずつ増え続け、キャンプは破たん状態です。
しかし、資源の乏しいソマリアに国際社会の関心は薄く、援助も十分ではありません。
「いかにして自立できるような国をつくることが大事かなと思っています。その子たちが今後どうなるのか、兵士になるのはまずい、海賊になるのはまずいので、やっぱり将来がある国にしていくような援助」(国境なき医師団 黒崎伸子医師)
本格的な海賊の取り締まりには乗り出した国際社会。しかし、問題を本当に解決するには、「無政府状態」という海賊や難民を生み出す状況の改善が必要です。(21日15:41)