Honey★Drop


午後の光が眩しい応接室。
心地よい風がカーテンを膨らませる。

ディーノがやって来た時、恭弥は昼寝の真っ最中だった。

ディーノは静かにソファに腰掛ける。

(キレイだな)

光に透けてもなお黒い髪も。
長い睫毛が頬に落とす影も。
全部全部、綺麗だと思った。

(日本人ってこんなにキレイだっけ)

ぼんやりとそんなことを考えながら、ディーノも眠りに落ちていった。




膝の上のぬくもりで目が覚めた。
目の前に丸っこい頭がある。

(うわっ!)

恭弥が、ディーノの肩にもたれかかるようにして眠っていた。

既に窓は閉められており、外は真っ暗で。
窓を閉めたであろう張本人は二度寝中。

「おい、恭弥。きょーや」

ゆさゆさ。

「ん……」

いやいや、と首を振って恭弥は眠り続ける。
全く、寝ぎたないにも程があるだろう。

(仕方ないな)

安心している、心を許されていると思えば嬉しいけど。

(理性飛びそう)

顎を掴んで上を向かせて、唇を食んだ。
眠っているのをいいことに、口腔を思う存分貪る。

――ガキィッ!!

「うわぁっ!!」

情けない悲鳴を上げて、ディーノがソファに倒れこんだ。

「……何サカってんの」

「お姫サマは王子サマのキスで目覚めるのが相場……ゴメンナサイ」

トンファーを構えた恭弥の殺気に思わず頭を下げる。

「謝るなら最初からしないでよね」

口ではそんなことを言いながらも、恭弥はディーノの横から退こうとしない。

「恭弥……?」
「あなた温かいから」

そう言って、恭弥はディーノの胸に頬を摺り寄せた。

(ちょっ……それは反則っ……)

コホコホと恭弥が咳をする。

「窓開けて寝るからだぞ。……あ、そうだ」

ディーノがポケットから取り出したのは、キャンディーの入った瓶だった。

「イタリア土産」

恭弥が瓶を微かな光に透かす。
コルク栓を抜き、個包装された一個を手にとって言った。

「あなたの髪の色だね」

温かな黄金色。太陽の色。
口に含んだソレは、甘い甘い蜂蜜味。

「きょーや、オレにも一個ちょーだい」

(言うと思った)

恭弥はそっと顔を上げ、ディーノに口付ける。
口の中のキャンディーがディーノの舌に攫われた。
キャンディーを舐めているのか、舌を舐めているのか分からない。
唯、分かるのは甘いということ。

「……っ、はぁっ……」

どれくらいキスしていたのだろう。
キャンディーはとっくの昔になくなっていた。

「大事に食えよー」

くしゃくしゃと頭を撫でられる。

(こんなの、まともに食べれる訳ないじゃない)

食べるたびに、このキスを思い出しそうで。
だから。

「やだ」

ディーノが驚いた顔をした。

「これ食べる時は、ディーノが食べさせて」

顔に血が集まっているのが分かる。

ディーノはにっこり笑って答えた。

「仰せの通りに」



* * * * *

甘いディノヒバ、頑張ってみました……撃沈。
私が書くと、恭弥は甘えん坊の駄々っ子になるようです。
精進したいと思います……。



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