赤平市の中心部に位置する市立赤平総合病院(180床)。計5棟延べ床面積1万7617平方メートルに及ぶ総合病院は、最盛期に計10診療科体制だった。しかし、医師不足から現在は8診療科となり、病棟2階のフロアはほぼすべてが書庫や空き部屋となっている。
その一つ、もともとは「食事談話室」として使われていた部屋で、ボランティアの女性3人が入院患者用のタオルをたたんでいた。「少しでも力になれたらと思って」。市内の主婦、真鍋公子さん(62)は参加したきっかけをこう振り返る。
ボランティアは08年7月にスタート。真鍋さんら登録している37人が3~4人でローテーションを組み、看護助手の仕事だったタオル洗濯を担う。1周年を前に活動領域を広げるため、車いすの補助などの学習会を開いている。「(看護師の)要員はギリギリの状態。おかげで患者にかかわる時間を増やすことができる」。前淳子総看護師長は感謝した。
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赤平総合病院の不良債務(赤字)は07年度決算で29億4900万円に膨らんだ。94年6月に全面オープンした診療棟・管理棟は総工費約36億4900万円のうち約35億円を起債で賄った。さらに医師、看護師不足による病床数削減で収入減となったことが主な原因だ。
膨大な赤字は市の財政を危機的状況に追い込んだ。08年3月時点の連結実質赤字比率(見込み)は財政破綻(はたん)となる財政再生団体基準(40%以上)に肉薄する39・22%。早期健全化団体入りを突き付けられるのは確実だった。
そんな中、赤平総合病院の赤字のうち13億8220万円については7年償還の「公立病院特例債」への借り換えが認められたため負担が軽減。08年9月には5億2500万円を貸し付けていた第三セクター「赤平花卉(かき)園芸振興公社」の売却(1億8100万円)も決まり、赤字比率は19・48%まで低下した。高尾弘明市長は「最大のピンチは脱した」と安堵(あんど)の表情を浮かべる。
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94年の住友赤平炭礦(たんこう)閉山後、不況の波に覆われた赤平市は市民負担を抑制する方針をとってきたものの、今回の危機で「受益者負担」に転換。保育料や下水道使用料などを軒並み値上げした。固定資産税や都市計画税の税率も上げ、道内35市のうち最高水準になった。
市民説明会では「なぜ(財政難を)放置したのか」と批判も出た。しかし、夕張市を間近に見ているだけに、「破綻したらどうなるかを市民も承知している。不満はないわけではないが、協力してくれている」と高尾市長は話す。
市は99年度以降、専門職を除き新規採用を中止。職員数は08年度には10年前の約5割減となる185人に落ち込んだ。一部職員からは「年齢構成がいびつになり、将来的に市の運営ができなくなるのではないか」と懸念の声も漏れる。「市存続のためにはやむを得ない」。市職員労働組合の高橋脩委員長は苦渋の表情を浮かべた。
乾いたぞうきんを絞りに絞ってようやく見えてきた財政再建。たどりついたのは、まだ入り口にしか過ぎない。【高山純二】=おわり
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■ことば
公立病院の不良債務(赤字)を償還期間7年以内の長期債務に振り替えることで、計画的な返済ができるようにした特例債。08年度に限って発行できる。総務省の「公立病院改革ガイドライン」に基づく改革プランを策定し、将来的に不良債務の解消が見込まれる自治体が発行対象で、道内では函館、留萌、根室など12市町が発行した。
08年12月に策定された赤平市の改革プランでは11年度に黒字化し、計画最終年の15年度に不良債務(07年度決算で29億4900万円)をゼロとする計画になっている。
毎日新聞 2009年6月14日 地方版