東広島市八本松町原の広島少年院の法務教官4人が9日、特別公務員暴行陵虐容疑で逮捕された事件。犯罪を犯した少年を教育し社会復帰させる役割の法務教官が、少年に悪質な暴行をした疑いで逮捕される前代未聞の不祥事となった。外部から隔絶された金網の中で何があったのか。全容解明に向け、広島地検の捜査のメスが入った。
福祉施設などが点在する小高い丘の上にある広島少年院。午後3時20分、広島地検が家宅捜索に入った。係官が関係書類などを押収するため、段ボール箱などを次々と運び込んだ。施設は約3メートルの金網に囲まれ、人の出入りはほとんどない。金網越しには、濃い水色の作業着を着た職員の姿が見えるだけで、数十メートルは離れた施設の中の様子をうかがい知ることはできなかった。
詰めかけた約30人の報道陣に対し、同少年院の岸元攻次長が「少年や保護者に申し訳ない。国民に謝罪したい」などと話しただけ。法務教官が、なぜ、どんな状況で、洗剤の容器を口元に押しつけるなどの卑劣な暴行を行ったのか。事実が現場の職員の口から語られることはなかった。地検の家宅捜索は、暗闇に包まれるまで続いた。
広島矯正管区は午後3時半、中区の広島合同庁舎で会見。横山和洋・第1部長は、頭を低くして謝罪。「逮捕された4人以外の関与を含めて調査している」と話したが、暴行の動機や状況について具体的な説明は何もしなかった。4人の処分についても「一連の捜査を終えて厳正に処分する」と話すにとどまった。広島地検は午後4時半、逮捕を発表。信田昌男次席は「動機や背景、恒常的に暴行が行われていたかについて調べる」と厳しい口調で語った。
毎日新聞 2009年6月10日 地方版