伐採したモミに駆け寄り、心配そうに倒れた先を見つめる諏訪大社下社の氏子たち=11日午前11時20分すぎ |
来春の諏訪大社御柱祭に向け、下社(諏訪郡下諏訪町)の御柱用材8本のうち、5月3日の伐採時に折れた「秋宮四之御柱」の新たな用材の伐採が11日、下諏訪町の東俣国有林内で行われた。目通り周囲2・4メートル、高さ27メートルのモミは作業開始から約2時間後に伐採されたが、倒す方向が大きくずれ、近くにいた2人が逃げる際に転倒するなどして軽いけがをした。
伐採には、大社の平林成元宮司(68)ら神職や各地区の大総代、町内の各区長、氏子ら約120人が参加。モミを囲んで神事をした後、午前9時すぎから斧(よき)とのこぎりで伐採を始め、倒れたモミが斜面を滑り落ちないようワイヤも張った。
斧で受け口を入れた後、伐採担当の氏子たちが交代で大のこぎりをひき、町木(き)遣(やり)保存会員らは木遣りで応援。午前11時20分すぎ、モミは地響きを立てながら倒れた。この際、予定した伐倒方向から90度ほど右方向に倒れ、近くにいた氏子たちが避難。警戒していた下諏訪消防署員によると、逃げる際に氏子の女性1人が足首、ケーブルテレビのエルシーブイ(諏訪市)のスタッフ男性1人が手に軽傷を負い、諏訪市内の病院に運ばれた。
関係者によると、5月の伐採時に用材が谷側に倒れた衝撃で折れたため、今回は山側に倒すことにしたが、モミの枝が谷側に張り出し、幹も少し曲がって重心が偏っていたため、倒す際にバランスを取るのが難しかったという。
伐採を担当した同町5区の区長、松倉秀雄さん(67)は「安全には十分に注意を呼び掛けたが思いがけないことで申し訳ない。今後この経験が生きるよう、伝統を引き継いでいきたい」と話した。
伐採された用材は、ほかの7本の用材とともに秋ごろ、同町内の県道八島高原線沿いにある「棚(たな)木(こ)場(ば)」に搬出される。