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周産期医療:“減床”の波紋/下 態勢 /山梨

 ◇医師らの確保が生命線 「床数だけ増やされても…」

 甲府市の県立中央病院・総合周産期母子医療センターは01年9月に設置されて以降、一度も受け入れを拒否したことはない。

 一方で、県内で出産できる医療施設は減少の一途をたどっているにもかかわらず、同センターの新生児集中治療室(NICU)の態勢(非常勤1人を含む医師6人と看護師約40人)は開設以来、ほとんど変わっていない。同センターの負担は大きくなる一方だ。

 にもかかわらず、トップレベルの周産期死亡率の低さを維持できる背景について、同センター新生児科の内藤敦医長は、医師や看護師の経験の豊富さと病院間の連携を挙げる。

 周産期医療が同センターに集中するため、必然的に医療スタッフは多くの経験を積むことになる。

 一方で、満床の場合は他病院に引き受けてもらうなどして医療レベルを確保してきた。特に6床のNICUを持つ国立甲府病院とは「両輪」の関係にある。内藤医長は「誰か来たら誰かを追い出すのでは、救急病床とはいえない」と言葉に力を込める。

 しかし、10月からはその国立甲府病院の6床が3床に減り、その分同センターが増床される見込みだ。

 国立甲府病院の減床は、3人いたNICU担当医が1人になるためだ。しかし、県立中央病院の医師の増員については、今のところ「医師を派遣してもらっている山梨大医学部の協力が得られるかどうか」(県医務課)と、不透明な状況だ。

 「床数だけ増やされても対応できない」。5月28日に開かれた県周産期医療協議会で、県立中央病院の永井聖一郎・母性科主任医長はそう訴えた。新生児科の内藤医長によれば、増床で12床になれば、最低でも常勤医は7人必要という。

 一方、文部科学省は、NICUのない山梨大学医学部付属病院に12年までにNICUを最低6床設置する方針を示している。

 しかし、最終的にはベッド数よりも医師や看護師の確保が生命線となる。

 内藤医長は「今ある山梨の素晴らしい周産期医療をどう維持していくのか、医師だけでなく社会全体で考えていかなくてはならないと思います」と話している。【沢田勇】

毎日新聞 2009年6月13日 地方版

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