2009年6月11日22時46分
通勤電車内で女子高校生に痴漢をしたとして、強制わいせつの罪に問われた東京都立川市のアルバイト男性(23)の控訴審で、東京高裁は11日、懲役1年4カ月の実刑とした一審・東京地裁判決を破棄し、無罪を言い渡した。阿部文洋裁判長は、男性の手から女子高校生の下着の繊維などが検出されていない点などを挙げ、女子高校生の証言内容にも疑問が残ると述べた。
男性は07年2月5日の朝、西武新宿線の鷺ノ宮―高田馬場間で女子高校生の下着に手を入れ、触ったなどとして起訴された。一貫して否認し、3カ月間勾留(こうりゅう)された。
一審判決は、「スカートから抜かれた直後につかんだ手が男性のだった」という女子高校生や、留置場で犯行を打ち明けられたという別の男性の証言に信用性があると認定。「肩から下げたかばんのひもを左手で持ち、つり革を右手で持っていたら、被害者に左手をつかまれた」という男性の供述は不自然で信用できず、有罪と判断した。
しかし二審判決は、男性の手がスカートに入れられたことを女子高校生が目で確認していないことなどを挙げ、別の男性の証言も信用性に疑いが残るとして、無罪だと結論づけた。
満員電車内の痴漢事件をめぐっては最高裁が4月、客観的な証拠が得にくいことから「特に慎重な判断が求められる」と述べて無罪判決を言い渡している。男性の弁護人を務めた弘中惇一郎弁護士は会見で「最高裁の判決が、高裁の判断にも影響を与えているのではないのか」と話した。
男性は、「一審で有罪になって裁判って何だろうと思ったが、無罪判決で終わることができれば感謝でいっぱいだ」と語った。(中井大助)