2009年6月9日15時1分
よく使われる色づかい(上)と、誰でも見分けやすいように考えられた色(下)。厳密な色再現ではない=伊藤准教授提供
誰でも見分けやすいように工夫した色見本を、東京大や日本塗料工業会などが作った。色覚障害や白内障の人のほか、一般の人にも色を実際に見てもらい、2千色以上から20色に絞り込んだ。塗料用に続き、印刷インキ用の色見本も近く完成、デザイン業界などで使ってもらう予定だ。
東大の伊藤啓・准教授(分子神経生物学)は印刷インキメーカーのDICなどと協力、2年前から色見本づくりを進めてきた。実生活で使いそうな色を、屋外で日にあてたり、古い蛍光灯の下に置いたりして、色覚障害の人や白内障手術を受けた人のべ約40人に見てもらった。
これまでよく使われた色づかいでは、赤と緑は色覚障害の人にとってまぎらわしく、黄色は白内障の人には明るすぎたという。そこで赤はオレンジ寄りに、緑は青みを強く、黄色は濃くした。
どの人にとっても一番見やすい色というわけではないが、なるべく多くの人に見やすい色になるよう配慮した。一般の人も見やすいという。
色覚障害は日本で推定320万人、白内障は目の中の水晶体が濁る病気でこちらも推定百数十万人いるとされる。これらの人が家電製品や携帯電話を操作したり、案内図を見たりする際、色の見分けにくさが問題になっている。
伊藤准教授によれば、色覚障害の人が見分けにくい色は1950年代からわかっていたが、どうすれば見やすくなるか、という研究はあまりなかったという。伊藤准教授は「実用的なものができた」と話している。(小堀龍之)