「W杯アジア最終予選、日本1-0ウズベキスタン」(6日、タシケント)
真っ直ぐに、ただ真っ直ぐにゴールだけを目指した。前半9分、MF中村憲のロングパスにFW岡崎が飛び出す。そこにテクニックなどない。DF2人を交わして放った左足のシュートは、相手GKに弾かれた。それでも諦めない。真正面に浮いたボールに、自然に体が反応した。体ごと投げ出した渾身のダイビングヘッドが、南アフリカへの扉をこじ開けた。
男が歩んできた道は、決して輝かしかったわけではない。清水入団後はずっと“クビ候補”。常に期限付き移籍の候補に挙がっていた。クラブ幹部から「一生懸命やるから、つぶしが利く」と判断され、なんとかプロ生活が続く日々。FW入団にも関わらず、数合わせのためにボランチでプレーさせられたこともあった。ただ、それでも一度も下を向かなかった。自分の成長のためには、何にでもどん欲に取り組んだ。先輩の自主トレや、浜松大学陸上部への出げいこに積極的に参加。その積み重ねが、現在の急成長に繋がった。
昨年出場した北京五輪は3戦全敗の屈辱。「北京のリベンジはW杯でしかできない」。だからこそ、青いユニホームに懸ける思いは強い。今年1月に生まれた長男は『刀也』と名付けた。「刀の字に悪い印象はない。自分もチームで“侍”と呼ばれてるので」。ひたむきに走り、泥臭くゴールを狙う。ストライカーの道を極めようとする姿勢は、まさに“侍”だ。
契約を結ぶミズノに完全別注のスパイクを発注するなど、選手生命を懸けて臨んだ今遠征。試合終了とともに握りしめた拳には、しっかりとW杯への切符が握られていた。これで3戦連続ゴール。今年に入り8戦7得点と圧倒的な決定力で、名実とも代表のエースに成長した“侍ストライカー”。次は世界を相手に最大の下克上を起こす。