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「緑のオーナー」出資者、国に3.8億円の賠償求め提訴

2009年6月5日22時19分

写真:大阪地裁に入る原告ら=5日午後、大阪市北区、諫山卓弥撮影大阪地裁に入る原告ら=5日午後、大阪市北区、諫山卓弥撮影

写真:勧誘のパンフレットを示しながら会見する原告ら=5日午後、大阪市北区、諫山卓弥撮影勧誘のパンフレットを示しながら会見する原告ら=5日午後、大阪市北区、諫山卓弥撮影

写真:「緑のオーナー制度」の契約書(下)やパンフレット(上)=5日午後、大阪市北区、諫山卓弥撮影「緑のオーナー制度」の契約書(下)やパンフレット(上)=5日午後、大阪市北区、諫山卓弥撮影

写真:「緑のオーナー制度」の契約書(上)や「財産の形成」をうたうパンフレット(下)=5日午後、大阪市北区、諫山卓弥撮影「緑のオーナー制度」の契約書(上)や「財産の形成」をうたうパンフレット(下)=5日午後、大阪市北区、諫山卓弥撮影

 国有林の育成とともに財産形成ができるとして、林野庁が出資を募った「緑のオーナー制度」をめぐり、全国の出資者ら75人が5日、出資額を下回る「元本割れ」のリスクを説明しないで契約させたのは不当だとして、国に計3億8800万円の国家賠償を求める集団訴訟を大阪地裁に起こした。

 同制度で出資者が提訴するのは初めて。8万を超える出資者の9割以上が元本割れに陥っており、原告は今後も増える見通しだ。

 原告は大阪、東京、愛知、福岡をはじめ、青森、宮城、千葉、埼玉、神奈川、静岡、京都、兵庫、広島、香川、高知、大分など20都府県と海外に住む中高年中心の男女。制度開始の84年から97年までに25万〜3075万円を出資し、出資総額は約1億2800万円にのぼる。出資金全額と、契約時点からの遅延損害金(年5%)を求めている。

 訴えによると、林野庁は84年から、「あなたの財産を形成しながら、わが国の森林を守っていくシステム」と募集文書などで勧誘。元本割れのリスクを知らせず、約20〜30年後の契約満了時点での国有林の販売収益を分配する条件で出資契約を結ばせた。しかし、木材価格の下落を背景に、99年度以降、出資金が元本割れする事態が相次いだ。

 林野庁は94年から「誤解を招かないため」と元本割れのリスクを募集文書に「制度のQ&A」10項目の一つで記した。しかし原告側は「その後の契約時にも、林野庁職員らは分配金が出資額を下回るリスクがあることを口頭で説明してこなかった。国は、当初から木材価格の下落を予測できたはずだ」と訴えている。

 林野庁によると、昨年度までの平均受取額は1口50万円の出資額に対して約32万円。

 大阪の弁護士らでつくる被害者弁護団によると、さらに出資者10人以上が8月ごろまでに2次提訴する予定。弁護団長の福原哲晃弁護士は「出資者は国の制度を信頼しきっていた。国は国民に事業費の一部を負担させ、予想されたリスクを隠して損害を負わせた。制度そのものが適正であったのかを訴訟で問いたい」と話す。(平賀拓哉)

     ◇

 〈緑のオーナー制度〉 スギやヒノキなどの国有林に1口50万円(一部は25万円)を出資して国と共同所有し、約20〜30年後に伐採して得られた販売収益から出資口数に応じて利益が分配される仕組み。林野庁は84〜98年度、約8万6千の個人・団体と契約し、約500億円を調達。国有林の育成・管理などにあてた。元本割れが問題になった後の99年度から「対象の森林が減少した」との理由で募集を中止した。

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