「南端のシャンパーニュ」


マリー・ドゥメの当主であるアラン・ドゥメがワイン造りを始めたのが1976年のこと。またマリー・ドゥメというブランドを立ち上げたのは1987年以来となります。10haに及ぶマリー・ドゥメの畑は、シャンパーニュのアペラシオンの南端に位置し、シャンパーニュの中心部よりもシャブリに近いエリアにあります。畑にはピノノワールが80%、シャルドネが20%植樹されており2年から34年の樹齢のブドウが植わっています。現在、世界的な需要の高まりからシャンパーニュの高騰や枯渇が問題となっていますが、それでもなお、この地域では元詰めを行わずにブドウを販売する栽培者が多いと言います。そんな中で早くから自社ブランドを築き、元詰め(一部買いブドウから)でシャンパーニュを生産するマリー・ドゥメは奇特かつ希少な生産者と言えます。

「真っ直ぐ、頑固に」

10haに及ぶ畑の栽培は、しごく伝統的なもので必要な農薬を適宜使用しつつ成熟したブドウを栽培しています。「病害のリスクを考えた場合、農薬を使用することを否定することは出来ない。」とドゥメ氏は言います。冷涼な土地であるシャンパーニュの気候もその一因と言えるでしょう。その一方で、「必要のないものは使いたくない。」とも言い、除草剤を使用しないために小麦の種を畝と畝の間に撒いています。10月頃に撒かれた小麦は、成長と共に他の雑草の生育を妨げ、結果的に除草を必要としなくなります。麦自体は翌年の6月には枯れてしまい、ブドウの樹がもっとも養分を必要とする夏には、その成長の邪魔とならないのです。このように出来る限り農薬を減らすべく工夫を凝らしている姿と、「最低限の農薬は必要だ。」と言いきる姿のギャップに一昔前の頑固親父の照れくさい後姿を感じます。それもそのはず、ドゥメ氏には息子と娘がいるのですが、その娘がオーストラリア人の夫と一緒にフォジェールでワイン造りをしており、しかも、若い感性で様々なワイン造りを勉強している彼らは、昨今の「自然派ワイン」のアプローチにも注目しているのです。どうやらそれが面白くないアラン氏は、自然派を否定しながらも、工業的な手法に頼らないワイン造りを着実に続けているように思えます。

「コストパフォーマンスの秘密」

醸造に関しても、栽培同様に伝統的な手法を採用しており、(この地方では例外的に)手摘みによる収穫を行い、空気式圧搾機によるプレスを経て発酵・熟成。酵母と糖分を加えて瓶内2次発酵を行い熟成後に出荷となります。醸造過程の一部をオートメーション化することによって人件費を抑制して、結果としてコストパフォーマンスに優れた上質のシャンパーニュが生み出されています。

 

Champagne Cuvee Tradition Brut NV

ピノノワール90%、シャルドネ10%のセパージュ。ステンレスタンクを用いて発酵させ、最低でも15ヶ月の熟成を経てリリースされる。シャンパーニュらしい繊細な泡立ちと爽快な飲み口、豊かな果実味に満ちており、オレンジやレモン、スミレのような花のフレーバーが心地よく広がる。

Champagne Cuvee 19eme Brut NV

ピノノワール50%、シャルドネ50%のセパージュ。果汁の半分をオーク樽にて発酵・熟成させ、残りはタンクにて発酵。18ヶ月から20ヶ月の熟成を経てリリースされる。オークの樽がワインエレガンスと厚みを付与しており、複雑な味わいを備えています。バニラの華やかな香りと熟した果実、ヘーゼルナッツのフレーバーが印象的。

Champagne Blanc de Chardonnay Brut NV

シャルドネ100%のブラン・ド・ブラン。イノックスタンクを用いて発酵させ、熟成は15ヶ月から18ヶ月。フレッシュでいきいきとしたレモンのような風味にパイナップルや桃のような熟した果実の旨みも感じるアペリティフに最適なワイン。

Champagne Rose Brut NV

手摘みで収穫され、手作業で選別されたピノノワール100%のブラン・ド・ノワール。3〜4日のマセラシオン(=醸し)を行い、フリーラン果汁をブレンドして造られる。美しいルビー色の鮮やかさと豊かな果実の膨らみが心地よい正統派のロゼシャンパーニュです。

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