寄せつけない。触らせない。長身1メートル82の中川が、軽快な足さばきでハードヒッターを翻弄(ほんろう)した。
執拗(しつよう)な左ジャブで距離をとり、突進してくる沼田にカウンターの右ストレート。左目上を切り裂き、鬼の表情で迫ってくる相手を冷静にかわし切った。
「カッとしたら危ないと思い、右ストレートも完全には振り抜かなかった。ジャブが予想以上に当たった」と作戦勝ちを強調した。
回り道した過去がある。97年11月の東日本新人王決勝で1回KO負けすると、「もう上にはいけないと思ってあきらめた」。リングを離れた中川だが、運送会社で働きながら、もんもんとした思いに悩まされ、「後悔したくない。ベルトを巻きたい」と復帰を決意。03年に再び帝拳の門をたたき、6年がかりで闘いの場に戻ってきた。
今回の王座初挑戦に向け、人生で最もハードな練習を敢行。06年4月に2−0の僅差でからくも判定勝ちした沼田をこの日は完封。成長の跡を見せつけ「今後も強い相手と闘っていきたい」とキッパリ。31歳の苦労人は階段を着実に上り、日本の頂点にたどりついた。